公開シンポジウム「空飛ぶクルマのある『みなとまち神戸』の未来を語ろう」を開催 | 神戸大学経済経営研究所
Topics (2025.03.11)
公開シンポジウム「空飛ぶクルマのある『みなとまち神戸』の未来を語ろう」を開催 | 神戸大学経済経営研究所
2025年3月11日(火)に、神戸市中央区にあるANCHOR KOBE アンカー神戸、公開シンポジウム「空飛ぶクルマのある『みなとまち神戸』の未来を語ろう」を開催しました。本シンポジウムは、兼松株式会社主催、株式会社SkyDrive/東京海上日動火災保険株式会社 共催、Skyports株式会社 協力、兵庫県/神戸市 後援、当研究所および同 交通政策研究部会 特別協力(研究・運営委託)で開催されました。
空飛ぶクルマは、空の移動革命をもたらす都市型の次世代航空交通として、世界各国で実用化に向けた動きが進んでおり、日本でも大阪関西万博において飛行が予定されるなど注目を集めています。この新しい交通手段は「みなとまち神戸」の まちづくりや観光、防災、市民のライフスタイルに対して、どのような役割を担うのであろうかという点について、空飛ぶクルマの事業者、まちづくりや観光の関係者、行政、そして学術的な立場から議論を交わすというプログラムで開催されました。シンポジウムの開催に先立ち、北野重人経済経営研究所長および西川真史氏(兼松株式会社航空宇宙部長)より開会の挨拶がありました。
【北野 重人 氏】
【西川 真史 氏】
本シンポジウムは、二部構成となっており、第一部では、「空飛ぶクルマ」にさまざまな角度から関連があると言える6名による講演、第二部では「空飛ぶクルマ」の開発者、神戸ウォーターフロントの開発担当者、インバウンド旅行関係者、マリーナエリアの事業者、「空飛ぶクルマ」の安全面を考える保険会社、大学生研究員などさまざまなジャンルの方々を交えて、「みなとまち神戸の未来を空から語りあおう」をテーマにパネルディスカッションを行いました。
第一部の講演に先立ち、「そもそも空飛ぶクルマとは何?」という点で、戸村竜也 氏(株式会社SkyDriveエアモビリティ事業開発部)および山八哲矢 氏(東京海上日動火災保険株式会社航空宇宙・旅行産業部)より、「空飛ぶクルマ」の特徴に関する説明と、動画上映がありました。ここでは、よく混同されやすいヘリコプター・ドローンとの特徴の違い、また「空飛ぶクルマ」の国の施策等の紹介がありました。
続く6名による講演では、まず松尾美和 氏(神戸大学経済経営研究所)より「震災後30年、神戸ウォーターフロントの課題と可能性」と題して、神戸市の人口や経済の現状や空飛ぶクルマ関連の既存研究の知見を踏まえて、神戸市ウォーターフロント地区の将来像に対して空飛ぶクルマが果たしうる役割を概観していただきました。続いて武田史郎 氏(神戸市都市計画局)より「神戸市における空飛ぶクルマの期待」として、兵庫県並びに神戸市における空飛ぶクルマの実装促進事業のご紹介をいただくとともに、今後のウォーターフロント地区開発における空飛ぶクルマ活用への期待を伺いました。また、松本寿之 氏(一般財団法人神戸観光局観光部長)からは、「神戸観光の動向」と題して、神戸での宿泊者数やMICE需要増加が現在課題であること、現在再開発が三宮・ウォーターフロント地区で進んでいること、各種観光開発事業と空飛ぶクルマとのシナジーを期待されていることをお話しいただきました。
【松尾 美和 氏】
【武田 史郎 氏】
【松本 寿之 氏】
第4講演の戸村竜也 氏には「SkyDriveの取り組みについて」と題し、「100年に一度のMobility革命」としてSkyDrive社が取り組んでいる空飛ぶクルマの機体開発の現状や安全性能、他の交通モードに対する優位性、運用面における特徴をご紹介いただき、ユーザー側からの疑問点や懸念について回答となるご講演をいただきました。次いで斉藤優 氏(Skyports株式会社)からは、「バーティポートについて~世界におけるSkyportsの取り組みについて~」として、空飛ぶクルマの離着陸・駐機場であるバーティポートについてご説明をいただき、現在進行中のニューヨークのマンハッタンでのヘリポート改修事業や、2026年の商業運行開始を目指しているドバイの事業を具体的にご紹介いただきました。最後に中村 康平氏(兼松株式会社車両航空部門)から「兼松発祥の地 神戸での空飛ぶクルマ社会実装構想」として、「なぜ神戸で空飛ぶクルマを実現させるか」について兼松株式会社と神戸との深いつながりや、神戸市が掲げる神戸港将来構想とも絡めてお話しいただきました。
【戸村 竜也 氏】
【斉藤 優 氏】
【中村 康平 氏】
第二部のパネルディスカッション「みなとまち神戸の未来を空から語りあおう」は、松尾氏がモデレータを務め進められました。パネリストとして、第一部の登壇者の松本氏・戸村氏に加え、久保田昭則 氏(株式会社神戸ウォーターフロント開発機構)、谷維人 氏(GLION GROUP)、東優 氏(株式会社フリープラス)、高森史子 氏(東京海上日動火災保険株式会社航空宇宙・旅行産業部)、曽根美櫻 氏(HYOGO空飛ぶクルマ研究室)が参加しました。まず戸村竜也氏から、比較的初期に実現可能なサービスとして遊覧飛行が考えられること、そこから徐々に航続距離を伸ばして各地への定期運行へ広がっていくとの見通しが示されました。続いて高森史子氏よりアンケート調査を通じて明らかとなった、市民側の期待や不安、乗車意欲の男女差や年収謡別の差異をご紹介いただき、空飛ぶクルマという乗り物が市民に受容されるための課題と、潜在顧客層について議論が広がりました。
また、曽根美櫻氏からは、将来的に考えられるサービスについて動画でご紹介いただき、「ちょっと特別な機会に乗る、思い出に残る飛行経験」としての可能性を示していただきました。神戸ウォータフロントの再開発に携わっている久保田昭則氏からは現在進行中のウォーターフロント再開発計画と絡めて、空飛ぶクルマのサービスが、富裕層に限定せず幅広い市民に受け入れられるものとなることへの期待が寄せられました。また、ウォーターフロント再開発の中で行われることが決定した、日本初の大型ヨットに特化したマリーナのプロジェクトについて谷維人 氏からご紹介がありました。マリーナを利用する富裕層向けの観光開発を行うとともに、そこに市民や一般観光客向けの店舗も展開するということで、それらの利用者が空飛ぶクルマをあわせて利用する可能性を考えました。インバウンド事業を手掛ける東優 氏からは、富裕層外国人観光客が空飛ぶクルマの初期利用者として非常に可能性が高いとのご意見をいただき、「神戸で」空飛ぶクルマに乗ることが彼らを引き付ける特別な体験とするために必要なことについて示唆をいただきました。これらの議論を踏まえ、松本寿之 氏から神戸ウォーターフロント地区の観光振興にあたっての空飛ぶクルマの活用について、問題意識と期待が共有されました。
聴衆の方々は終始熱心に講演に聞き入り、パネルディスカッションの最後には、活発な質疑応答もあり、本シンポジウムは成功裡に終了しました。シンポジウム後には、「空飛ぶクルマについて知見を増やすことができた」「空飛ぶクルマの実用化が実現したら、神戸市・兵庫県・関西圏がより発展する起爆剤になるのではと感じた」「(消防関係の方より)防災・医療関係と言った公共的な分野に生かせるのではないか」等、「空飛ぶクルマ」に関する前向きなご意見・感想をいただき、シンポジウムに参加して良かったと多くの評価をいただきました。
公開シンポジウム 空飛ぶクルマのある「みなとまち神戸」の未来を語ろう
兼松株式会社主催、株式会社SkyDrive/東京海上日動火災保険株式会社 共催、Skyports株式会社 協力、兵庫県/神戸市 後援、神戸大学経済経営研究所/神戸大学経済経営研究所交通政策研究部会 特別協力(研究・運営委託)
- 会場
- ANCHOR KOBE アンカー神戸
神戸市中央区加納町4丁目2-1 - 定員
- 80名