RIEB Discussion Paper Series No.2026-J05
RIEB Discussion Paper Series No.2026-J05
タイトル
リフレ政策を検討する(2)―賃金抑制とコーポレート・ガバナンス(CG)改革―
要旨
日本の企業の従業員、配当、役員等への支払いをみると、その伸び率は高度成長期には従業員への支払いが、配当等の伸びを上回っていたのに対し、最近ではそれが逆転している。この背景には、英米流の株主重視のコーポレート・ガバナンス(CG)改革の影響があるように思える。わが国のCG改革は企業の収益率上昇などの成果をあげたが、一方では形式的な遵守に走り、実質が伴わず企業側の自発性が乏しいことが課題とされている。わが国のかつての日本的経営では、従業員とともに企業を自発的に運営するインセンティブがあった。この弱体化が、賃金抑制やCGの形式化を招いているのではないかと思える。一方、CG改革の模範とされる英国では、企業の目的を株主利益の増大から、企業活動によって社会的課題を解決するためと大きく軌道修正し、利益は目的ではなく課題を解決したあとの結果とする。社会的な課題を解決することをパーパス経営とし、それを適えてこそ「fairな」利益が得られるとの観念が生まれている。このためマルチ・ステークホルダーを重視し従業員の立場を向上させている。またわが国ではCG改革が政府主導で進められているのに対し、英国では政府から独立して改革が進んでいる。わが国にとって、現在の解決すべき社会課題は、従業員の賃金の上昇であろう。現在わが国企業でもパーパス経営が唱えられているが、CG改革では賃金上昇に配慮したパーパスの設定を促すべきではなかろうか。
キーワード
コーポレート・ガバナンス(CG); 日本的経営(Jタイプ); パーパス
分類コード
D86, M14, P51
連絡先
神戸大学経済経営研究所 リサーチフェロー高橋 亘
E-mail: wtaka.oue@gmail.com
