RIEB Discussion Paper Series No.2025-J05
RIEB Discussion Paper Series No.2025-J05
タイトル
主観的な金融リテラシーの現状と形成要因-「主観的金融リテラシーの形成要因に関する調査」の結果概要-
要旨
我々は、主観的金融リテラシーの形成要因を明らかにするため、30~50代の男女を対象に2025年7月に全国調査を実施し、3,003名からの回答を得た。本稿は、回答結果の概要を紹介することを目的にしている。まず、次のような回答結果が得られた。分野別の主観的評価には顕著な差異があり、「生活設計」「家計管理」に比べ、「証券投資」「保険」では自らを「劣る」と評価する割合が高く、特に女性で顕著であった。客観的評価の把握状況では、「把握していないが把握したい」という潜在的ニーズが全分野で高い一方、「把握している」割合は低かった。投資態度は女性で保守的傾向が強く、金融教育や家庭での経験不足も示された。低リスク商品の利用は多いが、株式・投信・確定拠出年金等の利用は限定的であった。
主観的金融リテラシーに焦点を当て、個人が自身の金融知識をどのように評価しているかと、その背景要因を順序ロジスティック回帰モデルにより明らかにした。分析の結果、特定の金融知識項目が、主観的金融リテラシーの自己評価に有意な影響を与えることが判明した。注目すべきは、一部の分野(借入やクレジットカード利用に関する知識)において、客観的知識が高いほど主観的評価が低くなる逆方向の関係が見られた点である。これは、金融行動に伴うリスク認識の高さが、自己評価を慎重にさせる可能性を示唆している。この結果は、金融教育政策において、単に知識の向上を目指すだけでなく、自己評価の歪みをどのように補正するかという観点で、自己評価の形成メカニズムや認知バイアスに配慮した介入設計の必要性を示している。
連絡先
神戸大学経済経営研究所家森 信善
E-mail: yamori@rieb.kobe-u.ac.jp
大阪電気通信大学メディアコミュニケーションセンター
荒木 千秋