RIEB Discussion Paper Series No.2025-J01

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タイトル

ゴーイング・コンサーン情報開示のリアル・エフェクト-投資意思決定に対する影響-

要旨

本稿は、日本において2009年に導入されたゴーイング・コンサーン情報(以下、GC情報と記す)の2段階の開示制度に注目し、GC情報の開示が企業の投資効率性に与える影響を調査した。2010年から2020年までのデータを用いてテストを実施した結果、新制度の下で財務諸表および監査報告書にGC情報が付された企業は、GC情報が付されなかった財務困窮企業と比較して過小投資となっている証拠を得た。GC情報を2段階に区別してテストを実施した場合においても同様の結果であった。さらに、銀行との密接な関係および高品質な監査が過小投資を緩和する証拠も得られている。本稿で得られた証拠は、経営者および監査人が有する破綻リスクの深刻さの程度に関する私的情報が、GC情報の開示をつうじて企業の投資行動に影響を与えていることを示唆し、GC情報が付された企業における会計情報のリアル・エフェクトを示している可能性が高い。

キーワード

ゴーイング・コンサーン情報; 投資効率性; リアル・エフェクト; 銀行; 監査人

連絡先

〒657-8501
神戸市灘区六甲台町2-1
神戸大学経済経営研究所
榎本 正博

大阪公立大学大学院経営学研究科
浅野 信博
日本語