RIEB Discussion Paper Series No.2023-J10

RIEB Discussion Paper Series No.2023-J10

タイトル

「金融取引における助言者に対するニーズと要望についての調査」の結果概要

要旨

 金融経済教育推進会議作成の「金融リテラシー・マップ」は、「外部の知見の適切な活用」を重要な金融リテラシーであると見なしている。しかし、現実には、助言の重要性について認識している人は必ずしも多くない。そこで、2023年8月に「金融取引における助言者に対するニーズと要望についての調査」を実施し、合計6,000人の回答を得た。主な結果は次のようなものである。「中立的な立場または商品購入者サイドの立場から信頼性の高い情報提供を行っている機関やアドバイス業者を把握し、相談やアドバイスを求めることができる」が自身にどの程度当てはまるかを尋ねたところ、当てはまるという人は21%にとどまっており、アドバイスを得る点での金融リテラシーが弱い傾向が見られた。実際、コロナ禍で何らかの経済的な問題が発生したという人でもFPに相談した人はごくわずかであった。一方で、実際に相談した人は、専門家から受けた助言に満足したとの回答が8割を超えており、相談している人は少ないものの実際に相談した場合には一定の満足度を得ている。ただし、「大変満足できた」は少なく、相談者のレベルアップの必要性もうかがわれる。さらに、「有料でも助言を受けたい」という回答は、最も多い株式投資に関してでも4%であり、助言を業とするには厳しい環境にあると言える。専門家の助言を無料でも受けたいとは思わない理由を尋ねたところ、約4割が「自分自身で決めたい」と回答している。ただし、「自分自身で決めたい」(ので相談しない)という人でも4人に1人は金融リテラシー点数(18点満点)が10点以下であり、適切な判断ができているのかに疑問が残る。金融助言者を選ぶ上で、ネット情報も貴重な情報源になり得るが、客観性に乏しかったりすることも多いので、それらの情報の真贋を見極める必要があるが、ネット情報に頼る人ほど金融リテラシーが低く、そうした能力を持たない可能性が見いだされた。今後、情報リテラシーと金融リテラシーの相互補完的な教育が必要である。金融助言者の信頼性や中立性を確保するために、政府がとると効果的であると思う施策を尋ねたところ、「従事者についての国家資格制度の導入(強化)」を挙げる人が最も多く、「個人情報の厳格な保護のための規制」が続いている。とくに、金融知識の高い人ほど、そうした政府による直接的な関与を求めている。

連絡先

神戸大学経済経営研究所
家森 信善
E-mail: yamori@rieb.kobe-u.ac.jp

名古屋学院大学経済学部
上山 仁恵

大阪電気通信大学メディアコミュニケーションセンター
荒木 千秋
日本語