RIEB Discussion Paper Series No.2023-J05

RIEB Discussion Paper Series No.2023-J05

タイトル

日本のトレンドインフレの計測:共和分アプローチ

要旨

 マクロ経済や物価安定を目指す際、インフレの基調的な動きを的確に把握する必要がある。ただし、基調的なインフレを実際に計測する際に課題がある。本稿では、インフレと金融市場環境との間には共通の確率的トレンドが安定的に存在しているという前提に基づき、金融市場環境の系列からトレンドインフレの計測を行うことを提案する。日本の 1980 年代前半以降の時系列データを用いた実証分析結果によると、インフレと金融市場環境との間には共和分関係が存在していることが統計的に支持される。そして、共和分関係に基づいて金融市場環境の系列の加重平均として計測されたトレンドインフレは、日本のインフレの長期的な推移の特徴を概ね捉えている。更に、計測されたトレンドインフレは、将来のインフレの不偏予測値としての特徴を持ち、予測パフォーマンスも高いことが分かった。

キーワード

インフレーション; 確率的トレンド; 共和分; 金融市場; 時系列分析

連絡先

神戸大学経済経営研究所/計算社会科学研究センター(CCSS)
柴本 昌彦
E-mail: shibamoto@rieb.kobe-u.ac.jp
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