RIEB Discussion Paper Series No.2023-J04

RIEB Discussion Paper Series No.2023-J04

タイトル

「コロナショック下の家計の金融レジリエンスと金融リテラシーに関する調査」の結果概要

要旨

 本稿は、2023年1月に実施した「コロナショック下の家計の金融レジリエンスと金融リテラシーに関する調査」の結果の概要を報告することを目的としている。
 コロナ禍発生前と比較した資産管理・運用に対する考え方の変化についてみると、36.0%が何らかの影響を感じたと回答しており、具体的な変化としては、「複雑でわかりにくい商品よりも、シンプルでわかりやすい商品を好むようになった」、「元本割れする可能性のある金融商品のリスクを、以前よりも気にするようになった」、「株式投資は必要だと思うようになった」等が多かった。コロナ禍における経済的な問題の相談先について尋ねたところ、経済的な問題があった2,928人の内、35.7%は「問題があったが、相談していない」と回答しており、相談にアクセスできていない層が多いことは大きな政策的な課題である。実際、具体的な相談先を見ると、「家族」や「友人・知人」といった非専門家に対してであり、適切な助言が得られていない心配がある。また、金融に関する知識・情報の入手源について尋ねたところ、「得ていない(得る必要もない)」は約4割であり、せっかくの機会を失ってしまったり、不要なリスクを回避できたりすることを積極的に伝えていかなければならないであろう。また、コロナ禍前後ともに「知識・情報を得たいが、どこから得ていいのかわからない」が1割超あり、信頼できる金融情報や助言を得られる社会的なインフラの整備が望まれている。さらに、「子供の頃に両親から株式投資の話をよく聞いたことがない」人が7割以上あり、また、「これまでに十分な金融経済教育を受けてこなかった」という人も7割弱おり、家庭や学校での金融経済教育が十分に行われてこなかったことを示唆している。

連絡先

神戸大学経済経営研究所
家森 信善
E-mail: yamori@rieb.kobe-u.ac.jp

名古屋学院大学経済学部
上山 仁恵
日本語