RIEB Discussion Paper Series No.2021-J01

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タイトル

金融機関の人材支援に対する中小企業の期待と不安―2020年「中小企業に対する金融機関の人材支援に関する調査」の結果の概要―

要旨

 本稿では、2020年8月に実施し、3500人からの回答を得た「中小企業に対する金融機関の人材支援に関する調査」の調査結果の概要を報告した。経営人材の採用に関心のある企業の多い従業員規模51人以上の企業の回答結果からは次のようなことがわかった。経営者として現在苦労している事項として46.4%の回答者が「従業員(非経営層)の確保、人材の育成」をあげており、コロナ禍での調査であったが、それでも人材が最大の課題であることがわかった。「現在、経営人材を採用したいか」を尋ねたところ、「採用したいと思わない」は19.7%であり、多くの企業が経営人材の採用の潜在的なニーズを持っていることが確認できた。「金融機関からの経営人材の紹介に期待しますか」と尋ねてみたところ、「非常に期待する」が10.5%、「ある程度期待する」が25.5%であった。期待する企業に一般の人材紹介会社に比べたメリットを尋ねたところ、採用後のフォローへの期待が強いことがわかった。地域金融機関が人材紹介業務に参入する場合、採用後のフォロー体制をしっかり構築しておかないと、顧客の期待を裏切ることになりかねない。逆に、金融機関による人材紹介に期待しないという回答者の回答を分析すると、金融機関が真に顧客のことを考えていてくれるという信頼感が乏しいことが背景にある。

連絡先

神戸大学経済経営研究所
家森 信善
E-mail: yamori@rieb.kobe-u.ac.jp

熊本学園大学経済学部
米田 耕士
日本語