RIEB Discussion Paper Series No.2020-J09

RIEB Discussion Paper Series No.2020-J09

タイトル

アジアデジタル共通通貨についての一考察

要旨

 本稿では、東アジアにおいて国際機関(例えばAMRO)により、ブロックチェーン等の技術を用いたデジタル通貨によってアジア共通通貨を提供することを考察している。デジタル共通通貨は、各国(エコノミー)の政府・中央銀行が各国の国債等を裏付けとして発行されたアジア共通通貨建て債券を資産に持つ発行体(国際機関)が発行するコイン(例えばAMROコイン)として提供される。AMROコインは、発行体から各国中銀・通貨当局を通じて、各国(エコノミー)の銀行・商店等に流通することになる。
アジア共通通貨については、今世紀初めころから欧州のユーロに触発されACU(アジア通貨単位)が試算されるなどの動きがあった。共通通貨は、デジタル通貨によって技術的な実現性は高まったといえる。なお本構想では、各国経済では各国通貨と本デジタル通貨が併存して流通することを想定している。
本構想のメリットとしては、①デジタル通貨としてのメリット、②共通通貨としてのメリットのほか、③多国間体制で公的に管理される通貨であることのメリットが指摘できる。①デジタル通貨は、国際的な送金等の効率性を高めるほか、地域の各国経済で進展する経済のデジタル化を推進する。また疫学的にも感染対策となることも重要である。②共通通貨は、為替リスクを軽減するほか、地域レベルの決済システムを提供することで、サプライチェーンの進展により進んだ生産貿易体制の一体化に対応した金融サービスを提供する。さらに③多国間の公的な体制で管理されることは、プライベイトな通貨より安全な通貨の提供を可能とする一方、大国による国際通貨の支配を抑制し、政治的な公平性を確保できる。
なお本構想は、将来的には世界的なデジタル通貨等への発展も展望できる。

キーワード

デジタル通貨; アジア共通通貨; ブロックチェーン; 口座型; トークン型

分類コード

E42, F33, F36

連絡先

国際協力機構専門家
アジア開発銀行コンサルタント
乾 泰司

大阪経済大学経済学部
神戸大学経済経営研究所 リサーチフェロー
高橋 亘
E-mail: wtaka@osaka-ue.ac.jp

阪南大学流通学部 元教授
石田 護
日本語