RIEB Discussion Paper Series No.2020-J06

RIEB Discussion Paper Series No.2020-J06

タイトル

近年における日本企業の経営者交代の特性―経営者のプロフィールと財務比率を中心として―

要旨

 本研究では日本企業を対象に,2010年から2019年までの経営者交代データを用いて,交代した経営者の属性,交代前後の財務比率と持株比率の動向について分析を行った。この時期の経営者交代に関しては,先行研究と比較して,長期的には経常的交代の比率が低下していることを示した。交代前の財務比率の特性としては,後に強制的な交代,外部者の就任が発生したグループでは業績がより悪化していた。しかし経営者交代が経常的かつ内部者昇進の場合は,指標によっては交代がなかったグループと同じか上回っている場合があった。つまり一部の交代には業績悪化以外の交代メカニズムが働いていることを示した。さらに交代後の業績については強制的かつ外部者就任のグループの業績の回復が大きいが,同じ外部者が就任しても退任経営者が実権を握っている経常的交代の場合は回復が進んでいない。また経営者持株比率,金融機関持株比率,一般事業法人持株比率,外国法人等持株比率といった持株比率と経営者交代のパターン(強制的交代か自発的交代か,内部者が昇進するか外部者就任するか)の関連も示している。こういった研究成果は今後の経営者交代に関する研究に有用な基礎的データとなろう。

キーワード

経営者交代; 財務比率; 持株比率

連絡先

〒657-8501
神戸市灘区六甲台町2-1
神戸大学経済経営研究所
榎本 正博

東北学院大学経営学部
山口 朋泰
日本語