RIEB Discussion Paper Series No.2020-J05

RIEB Discussion Paper Series No.2020-J05

タイトル

処遇の受容を可能にする要因-処遇に対する「正しさ」と「好ましさ」はいつ知覚されるか-

要旨

 本研究では,公正な処遇を形作ると先行研究が見なしてきた要因の多くが,実際に従業員による処遇の受容を引き起こすことを確認した。ただし,こうした因果経路の内実をより詳しく見た場合,例えば,人事評価の結果やそれを処遇に反映させるやり方が妥当であることが,従業員による処遇の受容を引き出すとは限らないこと,引き出すとしても処遇への公正感を経由するとは限らないことが示された。
また,処遇の決定過程のうち,処遇の決定基準については,公正感や満足感についての強い媒介効果を受けず,処遇の受容に直接影響しうることが示された。処遇の決定過程における評価者と被評価者の間の相互作用や情報授受に関する要因は,公正感と満足感の双方を根拠とした従業員による処遇の受容を引き出した。  処遇の結果や過程における妥当性に加え,処遇水準の高低という,それ自体としては概念的には公正性とは関係しない要因が,従業員による公正性知覚を経由して処遇の受容可能性を高める傾向については確認されなかった。処遇が公正か否かについての判断に対して自己正当化バイアスが発生する可能性は,本研究の分析結果を踏まえると限定的なものであった。

キーワード

処遇の決定基準; 処遇の際の相互作用; 処遇の際の情報授受; 処遇の水準; 受容; 公正感; 満足感; 媒介分析

連絡先

神戸大学経済経営研究所
江夏 幾多郎
E-mail: enatsu@rieb.kobe-u.ac.jp
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