RIEB Discussion Paper Series No.2019-J03

RIEB Discussion Paper Series No.2019-J03

タイトル

インド農家における経済活動の多様化:インド「全国標本調査」(National Sample Survey)の個票データを利用して

要旨

 本研究の目的は、2000年代以降、インド農家の経済活動の多様化がどの程度進展しているのかを分析することである。この期間、インド経済は年率平均7.5%で成長し、GDPの規模が2倍以上になっている。本研究では、こうした未曽有の高度経済成長を背景にして、農家は成長が作り出す経済機会をどのように自らのものにしたのか、あるいは逆にその経済機会をつかみ損ねたのか、こうした課題をデータを用いて定量的に検証している。分析結果から以下の諸点が明らかになった。第1に、2000年代以降の高度成長期におけるインド農民の経済状況は改善傾向を示しているが、(1)農家所得の成長率はGDP成長率の半分程度であり、農民の所得分配が悪化している、(2)農家の少なくとも10%程度において耕作所得や家畜所得がマイナスになっており、2012年においても1%から5%未満の農家の総所得がマイナスになっている、(3)この間、インド農業の最先進州であるパンジャブにおいて農家所得が下落している。第2に、インド農家の経済活動の多様化は進展しつつあり、(1)耕作所得と非農業自営所得シェアが下落し、(2)家畜所得シェアが増加傾向にあり、このことはインドにおける酪農や養鶏業の急成長と整合的であるが、(3)2015年における賃金・サラリー所得の急増は、データの比較可能性に問題があるので解釈には注意を払う必要がある。第3に、農家所得を決定する重要な要因として、(1)耕作所得と家畜所得については土地と労働であるのは間違いないが、(2)今後、農家の総所得改善に対して重要な貢献が期待できるのは教育水準の向上である。

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佐藤 隆広
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