RIEB Discussion Paper Series No.2019-J01

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タイトル

近世日本経済の発展と金融に関する一試論

要旨

 本論文では、日本経済史研究は、近世日本の経済成長を適切に測ることができていたのか、という点について、金融の視点から問題提起を行った。従来、近世日本における金融の発展は技術的な進化として論じられる傾向にあった。金融の機能として決済と融資を挙げるとすれば、前者については大坂市中、および江戸・京・大坂と地方とを結ぶ決済(送金)網の構築実態が解明されてきたし、後者については、領主金融を中心として、堂島米市場の金融利用、長期相対融資の展開、そして政策金融の展開がそれぞれ解明されてきた。
一方、量的な達成については、強調されてこなかった面がある。従来、長期的に経営帳簿が観察できる鴻池屋善右衛門を中心に、金融商人の資本蓄積が論じられてきた。それによれば17世紀における急成長と、18世紀以降の停滞、幕末に向けた「退嬰化」が指摘されている(安岡重明(1998)『財閥形成史の研究〔増補版〕』ミネルヴァ書房)。本論文では、金融商人の資本蓄積が急速に進んだ背景に、大名経済の成長があったのではないかとの仮説を立て、その検証に向けた試論を展開した。

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