Former Directors: MIYAO Ryuzo

所長からのメッセージ

宮尾 龍蔵

2008年4月に経済経営研究所長を拝命いたしました。若輩・微力ではありますが、職責を果たし、本学の経済学・経営学発展のために全力を尽くす所存でございます。ご指導・ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申し上げます。

当研究所は大正8年(1919年)、神戸高等商業学校の商業研究所として創設され、昭和24年(1949年)に経営機械化研究所と統合して「経済経営研究所」が発足しました。メインオフィスは六甲台キャンパスの兼松記念館本館(社会科学系図書館の東隣)にあり、春には本館前の枝垂れ桜が美しく咲き誇ります。2009年には商業研究所の創設から90周年を迎え、わが国の社会科学系の研究所としては最も古い歴史を有します。

大学に設置される研究所(「附置研究所」)には、学生教育を基本とする学部・研究科とは異なり、研究上の使命が特に掲げられます。当研究所は神戸大学における唯一の附置研究所であり、また経済学・経営学の両分野を掲げる研究所としても日本で唯一です。

研究所の一義的な使命は教育ではなく研究にあります。したがって、私どもの目的の第1は、経済学・経営学における学術研究のフロンティアを前進させ、新しい知の創出に貢献することです。世界レベルの最先端研究を推進し、世界の研究者が集う国際共同研究の拠点となることを目指しています。また経済学・経営学の両分野にまたがる学際領域の研究にも力を入れています。個々の学部・研究科では難しい複数分野にまたがる総合的研究は附置研究所だからこそ可能であり、経済と経営の融合領域でのフロンティア研究も重要な使命となります。
 当研究所の第2の目的は、先端研究に基づいた教育・啓蒙活動そして産学官連携活動を実施し、社会貢献を行うことです。先端研究の成果は学界の中だけにとどまらず、教育(特に大学院教育)や産学官の連携活動を通じて広く社会に還元されなければなりません。教育活動ではポスドクを雇用してプロジェクト研究に参加させるといった若手研究者養成の役割も重要です。産学官連携活動では、社会のニーズに合致した応用研究に積極的に取り組み、先端研究の成果を政策形成や企業経営などに活用することが期待されます。

当研究所はこれら2つの目的を掲げ、これまでも先端的・学際的研究活動と教育・社会貢献活動に精力的に取り組んでまいりました。研究面では、重点分野として、(i)グローバル経済の持続可能性と多様性に関する総合的研究、(ii)国際貿易や経済動学に関する最先端の理論研究、(iii)製造業の技術経営や日本企業の国際競争力に関する先端的な理論・実証研究などに取り組み、顕著な業績を挙げてきました。教育面では、研究所教員は、経済学研究科、経営学研究科(MBAコース)、国際協力研究科における大学院教育に参加・協力しています。またポスドクなどの若手を多数採用し、若手育成に積極的に取り組んでいます(2008年4月現在で7名)。
 産学官連携・社会貢献面では、技術経営に携わる最前線の企業人が参加する「情報家電産業・技術経営研究会」、研究所発足当時からの研究会開催が400回を超える「神戸大学金融研究会」、神戸商工会議所との共催で毎年行う「神戸経済経営フォーラム」、兵庫県と連携協定を結んで取り組む「少子化問題研究部会」などが、それぞれ活発な活動を続けています。また当研究所は、企業経営に関する貴重な歴史資料や原資料の整備・収集にも努めており、兼松商店(現兼松株式会社)の創業時から第2次大戦前までの経営を詳細に記述した「兼松史料」、企業経営の生きた姿が読み取れる社内報・企業パンフレット、主要企業の創立からの変遷を図示した「企業系譜図」などを架蔵・作成しています。

さらに2008年度からは、経済学と経営学の新しい融合領域である「アジアにおける関西ものづくり」に関する研究拠点形成を目指し、活動を開始します。日本の「技術」、「ものづくり」は、無資源国のわが国にとって貴重な資源であり、厳しいグローバル競争のなかで優れた技術をどう利益に結び付けていくか、またそれをどう次世代に伝えていくかは緊喫の課題です。とりわけ関西には優れたグローバル企業、中小・中堅企業が多数集積し、アジアとの競合、ネットワーク形成が重要なカギを握ります。当研究所には技術経営、国際経済、空間経済・企業集積などに関する最先端の研究実績が存在します。それらを総動員して経済学と経営学を融合し、産官や他大学等の協力も仰ぎながら、関西地域の活性化、ひいては日本全体の生産性向上に貢献したい、そしてアジアのリーダーたる日本の実力を一層高めたい。これが本構想の目指す最終的な目標です。

経済経営研究所は、各構成員がこれらの目的意識を共有し、今後も先端的な研究活動、先端研究に基づく教育・啓蒙活動、そして社会貢献活動に全力投球してまいります。神戸高商時代からの「伝統」を大切にし、かつ自分たちの強みを活かして社会のニーズにも答えられるよう「変革」を続けていく――「伝統」と「変革」をキーワードに、これからも経済学・経営学研究を強力に推進していく所存です。

平成20年4月
所長:宮尾 龍蔵

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