機械計算室の歴史<1>(経営機械化研究所の創設)

昭和16年に神戸商業大学に設置された経営計算室は、昭和19年に至り官制化され、経営機械化研究所が創設された。
初代所長には平井泰太郎教授が就任した。

本研究所は経営形態、経営分析、生産管理、労務管理、原価計算等に関する学理並びに運用についての研究を行うとともに、他方には経営経理に関する各種機械の運用操作についても研究を進めるために、本邦唯一のこの種の研究機関として設立された。
特に戦時下経済統制の飛躍的進展に伴い、各種事業経営ならびに官庁行政の事務は膨大化し、産業機構は複雑化し、経営経理機械化研究の重要性が著しく増大したので、経営計算研究室を更に拡充するために官制化されたのである。

次に経営機械化研究所の事業を要約すると;

  1. 経営及び経理に関する研究、経営及び経理に関する原理の研究はもとより、経営機械化に伴う経済・経営機構・経営管理・計算体系の研究、ならびに日本及び欧米における経営機械化の調査研究。
  2. 経営機械化に関する技術的研究、経営管理に関する機械施設及び器具の性能、並びに機械の試作、運用、応用の研究。
  3. 経営機械化の普及及び指導経営経理の指導、担当要員の養成、経営経理教育の改善に関する研究、図書・教科資料の編集、ならびに研究会、講習会、講演会の開催。

このように、経営及び経理に関する基礎研究に始まり経営機械化にかかわる担当要員の養成に至る広範な事業活動を目指していたのである。

また発足当時の定員と現員は;専任定員は教授2、助教授2、文部教官4、技師1、文部技官1、文部事務官1。 その職員構成(昭和22年1月1日現在)は、所長・参与2、所員9、研究員3、研究嘱託4、技術嘱託1、機械室主任心得1、事務嘱託1、雇3であり、事業活動との関連から当然理工系の研究員、技術員も名を連ねている。

この経営機械化研究所の創設(官制化)に先行して、経営機械化の教育を行なうための組織として経営計録講習所が設置されている。 この経営計録講習所は昭和19年2月10日、 1年課程として神戸経済大学に設置することが認可され、同年4月25日神戸海員会館において開所式及び開所記念講演会が行われている。

講演会のプログラムによると;

(ア).「航空機増産と経営計算の迅速化航空工業会」 常務理事 武田二郎
(イ).「経済統制に置ける統計の重要性」 内閣統計局長官 川島孝彦
(ウ).「戦力増強と経営計録」 経営計録講習所所長 平井泰太郎

等の講演が行われており、官・民各界からその成果に期待がかけられていたことが伺われる。
経営計録講習所には旧制大学、高専卒業の1年課程と旧制中学校4年終了以上の1年課程の2つのコースが設けられ、昭和19年4月24日に第1回入所式が挙行されている。

同講習所は戦後も1年半余にわたって活動をつづけ経営機械化要員の養成をおこなってきたが、社会環境、産業経済の激動による、当初企てた活動をつづける体制を維持する事も困難となり、また社会の要請も減退するとともにやむなく閉所せざるを得なくなり、昭和22年2月23日第5回卒業式を挙行し閉所した(延べ477名の聴講者)。

一方、経営機械化研究所は昭和24年5月31日法律150号(国立学校設置法)の公布により「神戸大学経済経営研究所」に統合され、経営機械化研究は現在の「情報経済経営研究部門」等に受け継がれている。

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