■ 研究テーマ

私たちはこの研究を通じ,各メンバーが関心のある問題に関する企業組織の現実の状態と望ましい状態の本質が何かを「なるべく単純な理論と実験」で解明できればと考えています.具体的には,まず現実の企業組織の行動を表現するモデルを,これまでの経済学・経営学・会計学の知的財産を基礎として,単純でかつ本質を失わぬように慎重に作ります.次に各企業が「完全に合理的な一個人」ならば,そのモデルの中ではどのような選択を行なうかを理論的な計算により予測します.最後に被験者を使った組織行動の実験(あるいは理論ほどの合理性を持たない個人を想定したシミュレーション)の結果と理論予測を比較し,その差異を検討し,必要ならばモデル作りからやり直そうと思います.
このような「モデル構築→計算による理論予測→実験によるデータとの比較→モデル再構築→…」というフィードバックは理工系の研究では極めて標準的ですが,社会科学の研究でこの手順を踏むものは少数派です.じっさい基本モデルを改善して新しいモデルを構築する理論的な分析,既に認められているモデルを元に行なわれるシミュレーション分析やデータ分析など,社会科学の数量分析は主に「大きな専門化」を通じ理論分野と計量分野でそれぞれ独自の発展を遂げてきました.しかし,私たちはこれらの大型の高度な理論的方法と計量的方法をそのまま組み合わせた壮大な実験を行なうほどの研究力は持ち合わせておりません.そこで私たちの研究グループは,なるべく単純な理論と実験を用い上記のフィードバックの手順を踏むことで,企業組織の研究という社会科学研究の一端につき「小さな総合化」を試みたいと考えています.
組織班研究代表者 下村 研一

本研究は以下の助成を得ています。
文部科学省(平成19年〜24年度)科学研究費補助金(特定領域研究)<課題番号:19046004>
領域研究代表者:西條辰義 大阪大学社会経済研究所 教授
文部科学省(平成19年〜24年度)科学研究費補助金(特定領域研究)<課題番号:19046004>
領域研究代表者:西條辰義 大阪大学社会経済研究所 教授