兼松セミナー(TJAR Workshop共催) Kanematsu Seminar (Jointly supported by TJAR Workshop)

日時 2011年7月23日(土)午後2時00分から
会場 神戸大学経済経営研究所 会議室(新館2階)
対象 教員、院生、および同等の知識をお持ちの方
使用言語 日本語
備考 論文のコピーは共同研究推進室にご用意いたします。

2:00pm~3:45pm

報告者 北浦 貴士
所属 東京大学大学院経済学研究科 博士後期課程/日本学術振興会特別研究員
論題 戦間期日本企業の配当政策と会計行動-電力会社を事例に-

4:00pm~5:45pm

報告者 米山 正樹
所属 早稲田大学大学院会計研究科
論題 「理論研究」のゆくえ-日本の財務会計研究の棚卸しをふまえて-
概要 本報告の主題は、日本の財務会計分野における「理論研究」が、会計現象に関する因果関係の解明にどういう形で貢献しうるのかを示すことに求められる。この主題を解き明かすため、本報告では以下の議論を行う。
第一に、日本会計研究学会の課題研究委員会最終報告書『日本の財務会計研究の棚卸し ―国際的な研究動向の変化の中で―』(2010)にもとづき、日本の財務会計研究、とりわけ「理論研究」と呼ばれる一連の研究が何を目指し、何を解き明かしてきたのか(解き明かせなかったのか)を要約・整理する。「理論研究」が抱えてきた研究方法上の問題点を明らかにすることが、そこでの議論の中心となる。これと併せて、「観察された会計現象をより良く説明しうる仮説」の模索は、実証の手続と「両輪」をなすものであり、その意味において、「理論研究」は(少なくとも原理的には)会計現象に関わる客観的な知見の獲得に貢献しうることを示す。
 第二に、現在の主流といいうる財務会計研究が、広い意味での「経済理論(組織論やファイナンスを含む)」に基礎づけられていることを示す。日本の伝統的な「財務会計理論」に依拠していない研究を「理論なき実証」とみるような、ナイーブな誤解を解くことがその趣旨である。
第三に、現在主流となっている研究手法では解き明かすことができない、重要な会計問題がないかどうかを検討する。併せて、もし未解明の重要な問題が残されているとすれば、その解決のために今後何が必要か(どのような領域に努力を向けるべきか)を検討する。想定可能な今後の対応は(1)利益の測定・開示メカニズムに関する知識を増すことによって、「経済理論」の適用領域を拡大するための努力と、(2)利益の測定・開示システムを支えている説明理論で、「経済理論」を代替または補完するものを模索するための努力に大別されるが、現時点においてそれぞれにどれだけの合理性を見出しうるのかも、ここで併せて検討する。
ところで上記の「理論研究」は、伝統的に行われてきた「理論研究」と少なからず異なっている。そこで締めくくりにあたり第四に、会計研究の目的として「会計現象に関する因果関係の解明」や「客観的な知見の獲得」に重きを置いた場合、これまで行われてきた「理論研究」にどのような意味が与えられることになるのかを論じたい。