科学研究費補助金による研究(平成25・26年度) List of Grants-in-Aid for Scientific Research (2013 - 2014)

基盤研究(A)

研究課題 デフレ・円高・財政危機:バブル経済の後遺症に関する包括的理論・実証分析と政策対応(平成24~26年度)
研究組織 上東 貴志(研究代表者)、髙橋 亘、地主 敏樹、北野 重人、敦賀 貴之、小林 照義、立花 実、柴本 昌彦
研究目的  現在日本経済が直面しているデフレ・円高・財政危機という深刻な問題は、90年代初頭のバブル崩壊に原因を求めることができる。本研究では、バブルの発生・崩壊、さらにデフレ・円高・財政危機といったバブル経済の後遺症を理論・実証の双方向か包括的に分析する。本研究の特色は、「貨幣・政府債務は本質的にはバブルである」との認識に立ち、バブル・貨幣・政府債務に関する包括的な理論を構築する点である。実証分析の対象は、80年代以降の日本を中心に、欧米・新興諸国、両大戦間期の日本も含み、適応性・普遍性の高い理論・実証結果を導き出す。本研究の目的は、グローバル化の進む世界経済において、日本経済が長期低迷に喘ぎ巨額な政府債務を抱える中、今後とるべき金融・財政政策に関する具体的かつ現実的な提言を行うことである。

基盤研究(B)

研究課題 国際的買収による世界市場への参入とその動学的影響(平成24~28年度)
研究組織 趙 来勲(研究代表者)、阿部 顕三
研究目的  It is often said that export is the engine of development. However, central to the issue is the question of, how firms in poor countries succeed in global competition. In this project, we investigate international acquisition as a new strategy for developing countries to emerge into the global market. We argue that, good firms in these countries can successfully convince global consumers of their quality by international acquisition. In contrast, bad firms cannot accomplish such a task. We intend to prove theoretically and find empirical evidence for this new strategy. We analyze the consequences of such acquisitions and their relationship with international trade and competition, in both the short run and long run. Finally, we also examine whether governments should liberalize FDI (foreign direct investment), in view of this type of acquisition.
研究課題 多数経済主体と非線形経済動学(平成23~26年度)
研究組織 西村 和雄
研究目的  本研究は、異なる経済主体からなる経済における個々の主体の意思決定と動学的均衡経路の大域的性質の分析を行う。
 これまでのマクロ経済学の動学理論では、代表的個人の効用を最大化する動学的モデルの分析が通常であり、たとえ多数主体が存在する動学モデルであっても、それぞれの経済主体は同じ効用関数をもつという仮定の下での分析が主であった。
 本研究では、異なる国が貿易を行う国際経済などのモデルを例とする多数経済主体からなる経済における動学的資源配分の分析を行う。更に、人的資本の役割を明らかにすることで、教育と生産性の関係も分析する。
 本研究は、経済を複雑系として捉え、多数の経済主体の相互依存をモデル化することで、経済のふるまいを説明するものであり経済を非線形システムとして捉えるという視点から既存の経済学の統合を図る。
研究課題 インドの産業発展と日系企業(平成25~28年度)
研究組織 佐藤 隆広(研究代表者)、絵所 秀紀、石上 悦朗
研究目的  本研究「インドの産業発展と日系企業」は、インドにおける産業発展や産業構造変化の実態を、日系企業の活動を切り口にして「空間」(産業集積地帯)と「時間」(集積が形成される歴史的経緯)の2側面に注目して明らかにする。本研究では、インド政府と日本政府の共同開発プロジェクトであるデリー・ムンバイ間産業大動脈(DMIC)と半島地域産業開発回廊(PRIDE)が、インド産業発展と日系企業が果たす役割を考えるうえで重要であるとの認識を持っている。また、本研究では、DMIC+PRIDE地域における食品・繊維・鉄鋼・製薬・二輪・金融の6産業を重点的に調査研究する。以下の3点が本研究の特徴である。第1に、代表性を持つインドの基幹的な統計資料を背景にして、特定の産業集積地域の特徴を洗い出したうえで現地調査行い、インド産業発展パターンの類型を摘出する。第2に、「企業グループ」「外国直接投資」「輸出活動」「R&D活動」のインド産業発展における役割を、現地調査を通じて分析する。第3に、自動車などの分野においてインドの工業化を牽引してきた日系企業の活動に注目し、日系企業がインドの産業発展に果たす役割を現地調査を通じて明らかにする。最後に、研究体制としては、代表と研究分担者2名のほかに、3名の連携研究者(三嶋恒平・慶應大学准教授、上池あつ子・国立民族学博物館研究員、宇根義己広島大学特任助教、1名の研究協力者(長田華子・東京大学研究員)の7名から構成されている。

基盤研究(B)(海外)

研究課題 グローバル・サプライチェーンの構築とマネジメントに関する調査研究(平成24~27年度)
研究組織 伊藤 宗彦(研究代表者)、加藤 厚海、石井 真一、朴 泰勲、下野 由貴、原口 恭彦
研究目的  本研究の目的は、グローバル・サプライチェーンの構築パターンとその有効なマネジメントのあり方を検討することである。具体的には、自動車産業におけるサプライチェーンの取引関係に注目し、生産面だけではなく、販売・サービスの視点からサプライチェーンの連携を明らかにし、サプライチェーンの現地化プロセスの解明、サプライチェーンの内部の取引慣行の解明、の3つの視点から検討を行う。現在、新興国市場の拡大に伴う急速なグローバル化の進展が、従来の先進国主導のサプライチェーン構築のあり方に大きな変化をもたらしている。したがって、本研究では、グローバル化の中心となっている新興国、特にアジア(中国、インド、東南アジア)を対象とした、新興市場に適応した自動車産業のグローバル・サプライチェーンの構築パターンとそのマネジメントについて考察を深めることにする。

基盤研究(C)

研究課題 近世金融市場における私的統治と公的統治―「大名貸」の比較制度分析―(平成23~25年度)
研究組織 髙槻 泰郎(研究代表者)、中林 真幸、結城 武延
研究目的  金融市場における資金調達の形態は、貸し手と借り手との間に存在する情報非対称の程度に応じて、匿名的な市場取引と、関係性に依存した取引を両極とする無数の組み合わせの中から選択される。前者を公的な統治の下に行われる市場ベースの金融取引(arms-length financing)、後者を私的な統治の下に行われる関係的融資(relational financing)とすれば、我が国においては、後者の関係的融資が重要な位置を占めてきたと言われている。しかし、貸し手と借り手の間に存在する情報非対称がいかに緩和されたのか、協調融資を行った金融機関同士でいかなる情報交換がなされたのか、といった点に肉薄する研究は存在しない。本研究は、これを明らかにする鍵を徳川時代に求める。鴻池屋善右衛門(現三菱東京UFJ銀行)や加島屋久右衛門(現大同生命保険)といった両替商は、貸付先となる大名の大坂蔵屋敷に手代を派遣して財政上の意志決定に参画させつつ、融資の可否を決定し、貸付額が自身の手に余る場合には、他の両替商と協調融資を行っていた。大坂の両替商が実現した関係的融資は、幕府による債権保護が脆弱であったことを一つの背景に形成されたものであるが、近代的な司法制度が整備された後も、全ての金融取引が市場ベースの取引に収斂したわけではない。我が国において関係的融資が重要な役割を果たしてきたとするならば、少なくとも過去300年間の金融市場の歴史を振り返り、その実態を解明していく作業が求められる。
研究課題 新会計基準の導入に起因する利益マネジメントについての実証研究(平成23~25年度)
研究組織 榎本 正博
研究目的  2000年以降導入されている新会計基準は企業の財務諸表に様々な影響をもたらし、その影響(特に多額の損失)は利益マネジメント(earnings management)の契機となっている。本研究の目的は新会計基準に関する利益マネジメントについて、いくつかの尺度を統一的に用いて比較し、各尺度の相互関係を検討することである。分析では利益マネジメントの有無及び程度を左右する要因(動機)を考慮する。各基準が企業に与えた影響について、利益マネジメントまで視点を広げることで、財務諸表上の数値だけでない、その全体像が理解可能となる。
研究課題 非相似拡大的選好と内生的時間選好による動学的貿易理論の再構築(平成25~27年度)
研究組織 岩佐 和道(研究代表者)、趙 来勲
研究目的  国際貿易が経済発展や各国の所得分配に及ぼす影響に関して、これまで多くの研究がなされてきた。しかし貿易モデルをもちいた理論分析では、家計の選好として相似拡大的選好が仮定されることがほとんどであり、さらに動学的貿易モデルにおいては、一定の時間選好率が仮定されてきた。これらの仮定は分析を大幅に簡便化する一方で、現実のデータとは整合的でないことが実証研究から明らかになっている。
 本研究の目的は、非相似拡大的選好および内生的時間選好を導入することで、より現実に即した動学的貿易モデルを提示し、それらのモデルの基本的な性質を明らかにするとともに、長期的な貿易利益や貿易と各国間の所得格差等に関する理論分析および政策の提言を行う。
 具体的には、(1)バラエティー財、(2)内生的時間選好と所得格差、(3)内生的時間選好と不決定性、及び(4)多数財に対する非相似拡大的選好に関してモデルを構築し理論分析を行う。
研究課題 新興市場国への資本流入問題に関するマクロ的分析-世界金融危機後の新たな課題と政策(平成24~27年度)
研究組織 北野 重人
研究目的  本研究は、世界経済の大きなリスク要因として近年関心の高まっている先進国から新興市場国への資本流入問題に関して、対応する主要な3つのマクロ政策(資本規制、為替政策、財政政策)について、資本市場の不完全性や景気循環に占める恒久的生産性ショックの優位性といった新興市場国の特徴を明示的に取り入れた確率的動学一般均衡モデル(DSGE)を構築した上で、最新の分析方法であるマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)によるベイズ推定を用いて政策効果の厚生を分析することによって、これまでの研究よりも現実妥当性の高い政策評価を行い、政策的合意を得ることである。
研究課題 日本企業による環境への取り組みとその情報開示が経済パフォーマンスに与える影響(平成24~26年度)
研究組織 西谷 公孝(研究代表者)、國部 克彦
研究目的  本研究の目的は、日本企業による自主的な環境への取り組みがその経済パフォーマンスに与える影響を、環境情報開示の役割に焦点を当てて実証分析することである。環境への取り組みが経済パフォーマンスを向上させるためには、需要増加がもたらす売上高増加および生産性向上がもたらすコスト削減の2つの経路がある。特に前者に関しては、環境への取り組みが直接影響するのではなく、何らかの開示された環境情報を通して影響すると考えられる。そこで、本研究では、簡単な経済理論モデルに企業の環境パフォーマンスや環境情報開示データを当てはめて実証分析することによって、日本企業の環境への取り組みと経済パフォーマンスの関係だけでなく環境情報開示がその関係にもたらす役割を明らかにする。
研究課題 グローバル供給網の復元力に関する空間経済学研究(平成25~27年度)
研究組織 濵口 伸明(研究代表者)、藤田 昌久
研究目的  近年、人・物・情報の移動費用が劇的に低下する中で、企業が工程間分業と各工程の国際的な再配置を進めている結果、大規模災害が引き起こす供給網(サプライチェーン)断絶の影響は増大する傾向にある。本研究計画ではグローバル供給網の自己組織化と寸断のメカニズムを産業集積の形成理論を中心とする空間経済学の視点から理論的・実証的に分析し、供給網の復元力を強化するための企業・政府・国際協力への指針を検討し、政策分析を行う。
研究課題 Great East Japan Earthquake and Autonomy of Japan Based Foreign Affiliated Firms(平成25~27年度)
研究組織 Ralf Bebenroth(研究代表者)、関口 倫紀
研究目的  This research attempts to investigate the situation of foreign affiliated firms and how they developed after the disaster. What has changed for them since March 11th 2011? How much did the disaster impact foreign firms in Japan? Especially, autonomy of subsidiaries and expatriate retreats will be investigated.

 東日本大震災の影響が外国企業へどの程度混乱をもたらしたのかについて科学的に考察することを目的としている。世界から日本における外国企業は非常に大切である。
研究課題 競争経済に均衡の複数制と財の不完全可分性が及ぼす影響の研究(平成25~28年度)
研究組織 下村 研一
研究目的  経済理論が深入りしなかった「交換経済均衡の複数性」と「商品の可分性」が市場経済の理論予測と計算結果に与える影響を解明する。完全競争市場の均衡は、需要と供給の関係により一意に定まるのが一般的だと考えられているが、参加者の商品の初期分配を少し変えただけで均衡が一つから複数に増えることは、市場実験のための単純な交換経済モデルでも比較的簡単に起こる。本研究では一意性と複数性の特徴づけを行いたい。また実際の商品はほとんど不可分であるにも関わらず理論モデルでは実数の範囲まで可分だと仮定され、この設定の違いは分析にあまり本質的でないと考えられているが、可分性の下で均衡が一つになる交換経済モデルでも不可分性の下では均衡が複数の場合が頻繁にあると予想される。この予想を計算科学の手法で検証したい。
研究課題 経営予想利益の裁量性に関する実証分析(平成25~27年度)
研究組織 首藤 昭信
研究目的  本研究の目的は、経営者予想利益の公表に伴う経営者の裁量行動を分析することである。具体的には、決算発表時に公表する次期の利益予想値について、(1)経営者は裁量的な調整を行っているか、(2)調整を行っている場合、その経済的動機は何か、(3)調整された予想利益に対して、株式市場はどのように反応しているか、ということを分析する。経営者の経済的動機としては、特に製品市場の競争度に注目する。証券取引所の要請によって行われる、上場企業の経営者予想利益の全社的な任意開示は、米国でも見られないわが国に特有な開示実務となっている。その経営者予想利益の信頼性を、経営者の裁量性の観点から多角的に解明することは、既存の会計研究のみならず、開示規制や開示実務にも有益なインプリケーションをもたらすことが期待される。
研究課題 戦前期ホワイトカラー企業の学歴評価(平成26~28年度)
研究組織 藤村 聡
研究目的  戦前期の企業社会について、従来は「戦前期企業は学歴に基づく強固な身分制社会であった」と理解されてきた。これは専らメーカー企業の職工(非学卒者)と技師(学卒者)の分析に基づくものであったが、近年の貿易商社の兼松や三井物産の賃金構造の研究では、従業員の賃金に学歴差はなかったと判明しており、ホワイトカラー企業とメーカー企業は異なる論理を持っていたことが予見される。本課題では、研究の蓄積がいまだ不十分なホワイトカラー企業を対象に、企業は従業員をどのように評価していたのか、そこで学歴はどのように扱われたのかという問題を解明したい。それは、これまでは余り論じられることがなかった企業の「意識構造」の検討であり、企業の心性という問題を視野に入れると共に、学歴社会と呼ばれる現代の日本社会の起源と成り立ちを探る試みになると期待される。
研究課題 経営者の会計的裁量行動と実体的裁量行動代替関係及び抑制に関する実証分析(平成26~28年度)
研究組織 榎本 正博
研究目的  本研究は経営者の利益を操作する2つの裁量行動、会計的裁量行動(会計方針の変更、会計上の見積の調整等:帳簿上の操作)と実体的裁量行動(R&D等の削減、値引販売等の売上調整等:実体の操作)の代替関係と抑制の分析を目的とする。まず会計・監査の厳格化による会計的裁量行動から実体的裁量行動へのわが国全般の代替的移行関係を時系列的に示す。時系列的特徴に加え、企業は目標利益達成目的で2つの裁量行動を組み合わせるため、それらが代替関係となり、さらに監査の質が代替の程度に影響を与えることを示す。しかし実体的裁量行動の抑制要素(企業内部:近視眼的でない経営陣、企業外部:洗練された投資家等)があれば代替ではなく、双方が抑制されることを示す。本研究で2つの裁量行動の抑制の構造を提供できれば、利益の質の改善につながる。
研究課題 太陽電池産業における国際的なビジネス生態系の発達プロセスの研究(平成26~28年度)
研究組織 松本 陽一
研究目的  本研究では、太陽電池産業における国境間をまたいだビジネスの生態系がどのように成立してきたのか、その詳細を明らかにする。
我が国は2000年代初頭まで、太陽光発電の普及を世界的にリードしてきたが、欧州で太陽光発電の普及が爆発的に進むと、最大市場としての地位を欧州に、有力メーカーの座を中国の新興企業に譲った。デバイスだけでなく、太陽電池の製造装置では欧州企業が大きな存在感を示している。欧州企業が開発した装置を使って、中国企業が作った太陽電池が、欧州市場で売られる、という構図が太陽電池では成立しており、かつてリーダーであったはずの日本企業の存在感は小さい。この研究では、どのようにして、この国境間をまたいだビジネス生態系が発達し、どうして日本企業が大きな存在感を保てなかったのかを明らかにする。

挑戦的萌芽研究

研究課題 わが国の地域社会が直面する課題を解決するツールとしての不動産金融の萌芽的展開(平成25~26年度)
研究組織 家森 信善
研究目的  不動産に頼らない金融というバブル崩壊以降の金融システム政策の発想を根本から見直し、金融機関が不動産を積極的に活用することで、地域経済の再生に寄与できる方策の妥当性を検討し、そのための制度提案を行う。このような形で、新しい不動産金融のあり方を提言することが本プロジェクトの最終的な目的である。

若手研究(B)

研究課題 太陽光発電のイノベーションと企業間競争における複数製品分野間の影響関係(平成22~25年度)
研究組織 松本 陽一
研究目的  日本では過去40年以上にわたり太陽電池をはじめとする太陽光発電関連技術の開発が進められ、その産業技術は一貫して世界トップの水準を維持してきた。ところが、地球環境問題への関心の高まりなどから太陽光発電の産業が急速に成長し始めた段階になって日本企業の世界的な地位が低下している懸念がある。太陽電池は半導体や液晶といった製品に類似の技術が使われ、それらに関連する企業が新規参入している。本研究は、太陽光発電におけるイノベーションに他の製品と共通の技術や、それを用いた企業がいかなる影響を与え、また、この分野の企業間競争にどのように関わってきたのかを明らかにし、そのような重層的競争構造の分析枠組みを提起する。
研究課題 低金利下における日本の金融政策に関する実証分析:資産価格を通じた波及効果の検証(平成25~28年度)
研究組織 柴本 昌彦
研究目的  低金利下に金融政策運営を行う際、非伝統的金融政策手段によって資産価格に働きかけ、それが最終的に実態経済に波及するものと期待される。本研究では、日本の低金利下における政策効果の識別を行い、そして資産価格に与える影響、更に資産価格を通じた実体経済への動学的波及効果を包括的に分析する。本研究の特徴は、他の構造要因が資産価格に与える要因も考慮に入れた下、「政策決定が行われた時点には金融政策ショックの変動は大きくなる」という識別条件を使って金融政策が資産価格に与える因果関係を推定するという手法を日本の高頻度データに応用し実証分析することである。金融政策が資産価格に与える因果関係を厳密かつ明示的に扱うことで、様々な資産価格の役割を比較分析できるとともに、先行研究との違いも分析することができる。

研究活動スタート支援

研究課題 豪農経営における当主の弟の役割再考(平成24~26年度)
研究組織 加納 亜由子
研究目的  本研究の目的は、生家に残った非相続人(いわゆる二男三男)の家族役割の再考である。具体的には、当主の弟の立場にあった人物が豪農経営の中で果たした役割を明らかにする。
 これまでの研究では、二男三男や当主の弟たちは家や村の中で一人前の扱いを受けなかったとされている。この評価は、家の公的な側面・当主の立場を基準にした観念的な評価である。
 そこで本研究では、当主―弟の間で交わされた書状の分析を通して、当主の弟が、当主の補佐的な役割・立場で豪農経営を支えていたことを明らかにする。
 本研究によって、公的な側面・当主の立場を基準に家族役割を論じてきた近世家研究に、その見直しを迫ることができる。