タイトル

高齢者の金融リテラシー計測の試み -「高齢者の金融リテラシーと金融行動に関する調査」の概要報告-

要旨

金融リテラシー研究においては、金融リテラシーを正しく計測することが議論の前提であり、金融リテラシーの尺度については、すでに国際的に確立した尺度として、Lusardi and Mitchell (2008)の3つの質問(金利計算、インフレの影響、分散投資に関する質問)が知られている。しかし、こうした質問が日本の家計の金融リテラシーの尺度として適切であるかどうかは検討されてこなかった。とくに、高齢化社会に入った日本において高齢者層にとってより相応しい金融リテラシーの尺度を模索することは重要であると考えられる。そこで、本稿では、2018年2月に3000人の高齢者を回答者とするウェブ調査「高齢者の金融リテラシーと金融行動に関する調査」を実施した。本調査では、金融リテラシーについては主観的な自己評価を尋ねた後、Lusardi and Mitchell (2008)の3つの質問に加えて、様々な客観質問を行っている。具体的には、「リバースモーゲージ」などの用語について、知っているかどうかを尋ねるタイプの10問の質問、「固定利子率で預金している人にとって、インフレ率は高ければ高いほど望ましい。」といった文の正誤を尋ねるタイプの15問の質問、「65歳以上の高齢者が特定疾病により介護状態になった場合にのみ、介護保険のサービスが利用できる。」といった、より高度な内容を記述した文の正誤を尋ねるタイプの10問の質問、を行った。本稿は、これらの回答結果および予備的な分析結果を報告することを目的にしている。

連絡先

神戸大学経済経営研究所
家森 信善
E-mail: yamori@rieb.kobe-u.ac.jp

名古屋学院大学経済学部
上山 仁恵

名古屋大学大学院経済学研究科
柳原 光芳