タイトル

リレーションシップ・競争環境と地域銀行の貸出行動

要旨

近年、地域の金融機関は、専門的なノウハウやコンサルタント能力の発揮により、地域の中小企業をサポートする姿勢を強めている。文書化されないソフト情報にとどまらない銀行の取引先へのサポート行動を含んだリレーションシップを構築することにより、地域の中小企業を支え地域経済活性化に寄与することに繋がる。一方、人口減少のもと地域銀行の競争は激化してきており、銀行の持続性の確保も課題となっている。本稿の目的は、リレーションシップを標榜するビジネスモデルは、地域競争環境の変化のなかで、どのような影響を受けるのかを明らかにすることである。分析にあたっては、リレーションシップの高い銀行と低い銀行に分けて、リレーションシップの高い銀行がもし低ければ効果はどうなるかという反実仮想の考え方を取入れ、傾向スコア加重最小二乗法を用いた。
実証分析の結果によると、リレーションシップの高い銀行はリレーションシップの低い銀行に比べ中小企業貸出比率は高く、事業性評価件数を利用して指標化したリレーションシップにおいては、高リレーションシップ銀行の貸出金利は低リレーションシップ銀行を上回っている。地域の金融環境をリレーションシップに影響する要因として取入れても、リレーションシップの効果は消滅しなかった。

キーワード

リレーションシップ、地域金融市場の競争度、傾向スコア、加重最小二乗法

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