タイトル

地域間介護給付水準の収束仮説の検証―保険者別データによる地域差変遷の把握―

要旨

本研究では、厚生労働省「介護保険事業状況報告」2006-13年度保険者別パネルデータを用い、地域間介護保険給付水準(被保険者・利用者1人あたり単位数)が収束しているかを、地域特性等をコントロールすることが可能な条件付きβ収束の手法により検証する。条件付きβ収束とは1人あたり変数が、その定常状態と比べより低い国・地域であるほど、(高い国・地域と比べ)より高い成長率(増加率)を上げるという収束過程である。介護保険制度浸透に伴い、介護保険サービスの整備が低水準、利用が非積極的だった地域において、施設整備が行われ積極的な利用が行なわれているかを検証する。また松岡(2016a)等の研究結果を踏まえ、他保険者との空間的自己相関を考慮したモデルにより推定を行う。推定の結果、全ての1人あたり介護給付水準(合計・サービス別)において、パネルデータを用いた最尤法推定からβ収束を確認した。介護給付水準増加率において他保険者との空間的自己相関の存在も確認した。β収束は利用者基準介護給付水準でより低く推定されており、介護保険制度浸透に伴い、介護保険サービス整備が低水準・利用が非積極的だった地域において、施設整備・積極的な利用がより生じていることが示唆された。一方、空間的自己相関は被保険者基準介護給付水準でより高く推定されており、保険者間の関係性は被保険者基準で強いことが示唆された。

連絡先

〒135-8181
東京都江東区有明3-3-3
武蔵野大学経済学部経済学科 講師
(神戸大学経済経営研究所ジュニアリサーチフェロー)
松岡 佑和