タイトル

若年社会人の金融経済教育と金融行動―2015年12月実施の実態調査結果―

要旨

本稿では、筆者が、2015年12月3~7日に実施した、大卒以上の20 歳代~30 歳代の正社員を対象にしたアンケート調査の結果を報告している。本調査では、回答者の金融リテラシーの程度を測定して、金融リテラシーの高低と金融行動、金融意識、金融経済教育の経験などの関連性を分析した。とくに、若年社会人を対象にしており、学校での金融経済教育の経験について詳しく質問をしている点に一つの特徴がある。 我々の分析によると、金融リテラシーが高い人ほど株式や投資信託に投資している。NISAの利用に関しても、金融リテラシーが最も高い層では3 割あるが、金融リテラシーが最も低い層では5%にとどまっている。また、株式投資をしている層では、新聞を読む習慣がある人、高校を卒業するまでに証券を学んだ経験がある人、大学で証券投資の講義を受講した経験がある人などが多かった。金融リテラシーと生命保険の加入状況を比較すると、金融リテラシーが高い層の生命保険加入が多く、金融リテラシーの低い層では「加入状況がわからない」と回答する人が多かった。金融リテラシーが高い人は、住宅ローンに付随した生命保険以外の生命保険に加入し、生命保険の加入の際には他社と比較検討し、保障内容についても十分理解している傾向が強い。 学校での金融経済教育の経験の観点からみると、高校卒業までに学んだことがあると回答した人の金融リテラシーが高く、学んだことはないと回答している人の金融リテラシーが低い。また、大学での金融全般の履修別に比較しても、全体的に履修形態を問わず受講経験がある人で金融リテラシーが高い。ちなみに、高校を卒業するまでに学んだことがある知識の内容としては、「1.経済の基本的な仕組み」について学んだ経験がある人が32.4%と最も多かった。対照的に、「証券」や「保険」に関して学んだことがある人は、いずれも1 割以下であった。

連絡先

神戸大学経済経営研究所
家森 信善
E-mail: yamori@rieb.kobe-u.ac.jp

名古屋学院大学経済学部
上山 仁恵