タイトル

メキシコにおける最近の貧困悪化と家計の脆弱性に関する一考察

要旨

本稿では、メキシコの2006年以降リーマンショック前までの貧困悪化に注目し、とりわけ最もマージナルな農村地域での貧困悪化について、2003年と2007年の2期間の家計調査パネルデータを用いて「家計の脆弱性」の観点から要因分析を試みる。具体的には「非貧困家計の貧困化」と「貧困家計の貧困脱出」の両面から農村家計の貧困・脆弱性の特徴および決定要因についてプロビットモデルを用いた回帰分析を行う。その結果、貧困および脆弱性が悪化しやすい家計の特徴は先住民家計・出稼ぎ者を持つ家計・農業に従事している家計・2007年に自家消費を持たない家計・信用へのアクセスのない家計である一方、世帯主の教育水準が高く、非農業収入または賃金収入へのアクセス(特にショック後)を持つ家計は貧困化しにくいことが示された。また、同期間に顕著に見られた脱農化との関連については、脱農後に賃金収入が得られる場合には脆弱性が緩和されうるが、移民・送金に依存する場合は脆弱性に対する緩和効果は見られなかった。

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