タイトル

グローバル金融危機時における政府系金融機関が果たした役割と中小企業からの政府系金融機関に対する評価の要因
-013年・中小企業アンケート調査に基づく分析-

要旨

我々は、2013年2月から3月に、中小企業15000社に対して、「金融機関に対する中小企業の意識調査」を実施し、4379社からの有効回答を得た。すでに、家森他(2014)において、調査の全容は報告しているので、本稿では、第一に、政府系金融機関がリーマン・ショック時に果たした役割を、主として民間金融機関との関係性の観点から分析した。政府系金融機関は、危機時においても設備投資を行う企業に対して成長資金を提供する一方で、経営困難に陥った企業に対してセイフティーネット的な資金の提供も行っている。成長資金の提供においては民間銀行が積極的な融資姿勢を取っているような企業で効果が大きくなる。逆に、セイフティーネット資金の場合は、民間銀行が資金提供に消極的である企業に対して効果が大きくなる。本稿の第二の関心は、政府系金融機関に対する中小企業の総合評価がどのような要因によって規定されているかを明らかにすることである。本調査の結果によると、訪問頻度を高めることや、融資審査においてハード情報だけではなくソフト情報を重視した姿勢を取ること、企業に対して様々な助言を行うことなどは、顧客企業から見た政府系金融機関に対する評価を高める上で重要である。長期固定で低利という政府系金融機関の資金の性質について、企業は高く評価しているが、それは当然と受け止められており、総合評価を一層向上させるには、コンサルティング面での職員の対応力の充実を図ることが不可欠である。

連絡先

神戸大学経済経営研究所
家森 信善
E-mail: yamori@rieb.kobe-u.ac.jp