タイトル

中古住宅購入者の金融リテラシーと住宅ローンおよび住宅瑕疵担保保険等に関する選択行動-実態調査結果に基づく分析-

要旨

わが国の中古住宅市場は諸外国に比べて未発達である。政府は2012年に中古住宅市場の活性化を図るために「中古住宅・リフォームトータルプラン」を公表し、最近では、安倍内閣の日本再興戦略にも中古住宅市場の整備が重要政策課題として位置づけられるようになっている。もちろん、これまでも中古住宅市場の活性化のための環境整備は着実に進められてきた。たとえば、中古住宅市場の問題の一つが物件の不具合が買い手にわからないという問題なので、瑕疵のある物件を購入した場合の事後的な救済策として、宅建業者等の売り手の責任を10年間に延長する住宅品質確保法が1999年に制定されているし、業者の賠償能力を担保するために2007年に住宅瑕疵担保履行法が制定されている。現在、わが国の新築住宅については、供託制度か住宅瑕疵担保保険制度かのいずれかによって業者の賠償能力が保証されている。しかしながら、中古物件については、業者からの購入であっても業者の資力確保措置が義務づけられておらず、任意の住宅瑕疵担保保険制度の利用は低調なままである。また、中古住宅市場の成長を阻害している要因の一つが、金融機関の融資態度(典型的には、築年数で単純に担保価値を減価していく融資実務)であるといわれている。
 こうした現実を踏まえて、著者は2014年9月に、中古住宅を近年購入した一般消費者に対してアンケート調査を実施し、約600の回答を得た。このアンケート調査では、①住宅瑕疵担保保険に関する消費者意識、②中古住宅に関する住宅ローン市場の実態、に加えて、③中古住宅購入者の金融リテラシー、について質問を行っている。本稿は、そのアンケート結果を報告することを目的にしている。

連絡先

神戸大学経済経営研究所
家森 信善
E-mail: yamori@rieb.kobe-u.ac.jp

名古屋学院大学経済学部
上山 仁恵