タイトル

信用組合の協同組合性と金融機関性について

要旨

信用組合制度が確立した第二次世界大戦直後の時代とは、経済環境は大きく変わってしまった。特に1990年代以降、信用組合の主たる顧客層である中小零細企業の経営状況が著しく悪化している。こうした中で、信用組合が、時代に合わせた「相互扶助」を実践していくことに社会の大きな期待が集まっている。信用組合は、信用組合らしい「強み」を生かして、顧客企業や地域社会の再生に取り組んでいかねばならない。そこで、本稿では、新しい時代において求められている信用組合らしい地域貢献のあり方を検討する。具体的には、まず、第2節で、信用組合の制度的な枠組みを確認する。第3節では、相互扶助の意味内容を固定的に捉える必要はなく、相互扶助の厳格運用という意味での原点回帰では何の将来展望も開かれないことを指摘する。そして、金融審議会・協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ(協金WG)(2009年6月)での議論に従って、地域金融機関としての機能を果たすことがこれからの信用組合にとっての「相互扶助」だと提案する。第4節は、日本の中小企業の経営状況を分析し、信用組合の現在の顧客層である中小零細企業の業績の落ち込みが顕著であることを明らかにする。第5節は、個別融資データを利用して、信用組合の顧客層では、零細企業が多く、かつ、経営状態の厳しい企業が多いという現実を確認する。第6節は、企業アンケート調査の結果を紹介し、信用組合の顧客層へのコンサルティングサービスの状況を紹介する。第7節は、以上の分析を踏まえて、信用組合が強化すべき方向性について私見を述べる。第8節は、本稿のまとめである。

キーワード

信用組合、協同組織金融機関、中小企業金融、相互扶助


連絡先

神戸大学経済経営研究所
家森 信善
E-mail: yamori@rieb.kobe-u.ac.jp