タイトル

開発援助論序説(南北問題から地球環境問題へ)

梗概

本論文は国家間の対立の図式が変容していく様子を「南北問題」から「地球環境問題」まで歴史的に辿った試論である。「南北問題」の中では先進国と開発途上国の経済格差が対立の要因であり、そこで先進国が行なった開発援助は西側自由主義陣営と東側社会主義陣営の東西イデオロギー対立を色濃く反映したものであった。ベルリンの壁の崩壊によって東西イデオロギー対立が解消した後に「地球環境問題」という新たな開発問題が顕在化した。ここでは国家の政治的、社会的問題が新たな対立要因に加わって、先進国と開発途上国という対立軸では捉えきれない先進国同士、開発途上国同士の対立も含む複雑な様相を呈するようになった。  開発援助については戦略的開発援助、開発援助の理念など翻訳本を含めて多くの著作が出版されているが、欧米先進国の援助実施体制あるいは開発援助スキームはそれぞれ異なっており、それぞれの援助実施体制の中での戦略性や理念であるとの視点をもつ必要があろう。本論文は日本を含む欧米先進国の開発援助スキームを超えて、また、開発援助が先進国と開発途上国の対立を緩和する有力な手段であるとの視点に立って、開発援助の国際的な枠組みについてどのような議論が行なわれてきたかを歴史的に辿ることによって、その変容を明らかにしようとする試論である。

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