タイトル

体験的ASEAN援助論

要旨

私は1999年3月より2002年5月まで、ジャカルタの在インドネシア日本大使館に勤務した。 日本政府はこのASEAN基金に資金協力をするとともに、自分を開発専門家として派遣して人的支援を行ったのである。自分の職務は、ASEAN基金事務局が日本政府が拠出した日・ASEAN連帯基金(以下、連帯基金)を使ってプロジェクトを実施し、運営管理するのを技術支援することだった。
 ASEAN基金に限らず国際機関(含、地域国際機関)は多国籍の組織であるために、元来いろいろな問題を抱えているのが常である。しかし、ジャカルタ勤務ではこうした問題に直接に巻き込まれることになった。問題は自分が想像したより多面的で根が深く広範囲なものだった。日本とASEANの外交関係に関わる本質的な問題に翻弄されたこともあった。こうした本質的な問題が生じた時には、自分の立場や正当性を超えてしまうことも体得した。他方、自分の専門知識を駆使すれば技術的に解決可能な問題も多々あった。
 こうした様々な問題に直面して、荒波に揉まれている内に日本の援助とASEANの関わりについて見えてくるものがあった。ASEANの立場からどのような援助スキームが求められているのか、それに対して日本はどのように応えていかなければならないのかといったことに、自分なりの知見を持つことができた。本論文は自分の知見がASEAN基金という小さな地域国際機関との直接的な付き合いを通じ、修得されていく過程を自らの体験に沿って述べたものである。いわば、自分の体験的ASEAN援助論でもある。
 また、本論文で述べた日本の援助スキームに対する自分の考え方は、ASEANでの現場の体験を基にした原則論を述べたものである。援助の現場におられる方々は真摯に職務に取り組んでいることは十分承知している。技術的にも様々な改善努力がなされていることも承知している。技術的、専門的にみれば援助スキームは現場の変化に応じて変化していると思う。従って、日本の援助スキームについての自分の知識が古かったり、舌足らずの部分があった場合には、皆様方のご批判を甘受したいと思う。

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