RIEB Discussion Paper Series No.2011-J04

タイトル

知識基盤の構造が組織の知的成果にあたえる影響:液晶ディスプレイ産業の実証分析

要旨

企業が他社との競争で優位にたつためには、何らかの差別性をもたなければならない。 そのひとつの要因として多くの研究が蓄積されてきたのが、組織のもつ資源に着目した 資源ベースの企業論であり、とりわけ近年では、資源のひとつである知識に着目する研 究が盛んになっている。多くの研究者が知識基盤を構成する個々の知識要素に着目し、 それと組織の成果との関係を明らかにしてきた。それに対して、Yayavaram and Ahuja (2008)は組織の知識基盤の構造を分析し、それが組織の知的成果に影響することを 示した。ここで言う構造とは、知識基盤を構成する各要素間のつながり方で記述される 全体の性質である。彼らの研究は画期的な成果だが、個々の知識要素の異質性 (heterogeneity)を考慮していない。知識要素の異質性が大きいほど、それを統合し て新たな発明を成し遂げる難しさは増すはずである。液晶ディスプレイを対象とする分 析によって、①知識基盤を構成する要素のうち異質性が相対的に高い要素が強く結びつ けられた構造をもつほど組織全体のパフォーマンスにとってプラスである、②異質性が 極めて高い知識要素同士が結びつく割合が増えると、発明の平均的な質にはプラスの効 果をもつが、③発明の数にはマイナスの効果をもつ、という3点を明らかにした。

連絡先

〒657-8501
神戸市灘区六甲台町2-1
神戸大学経済経営研究所
松本 陽一
TEL: 078-803-7036 FAX: 078-803-7059