兼松セミナー (Kanematsu Seminar)

日時:
(Date&Time)
11月5日(金)午後4時から (Friday, November 5, 4:00pm〜)
報告者:
(Speaker)
藤井 宏一(厚生労働省)
論題:
(Topic)
労働経済白書の概要及びグローバル化についての白書の分析
概要:
(Abstract)
グローバル化等が進み、産業構造が変化する中で、わが国の生産性上昇率は低下化している。また、労働者の就業意識が変化し、労働者の仕事に対する満足感が長期的に低下傾向にある。このような中で、産業の高度化・高付加価値化を図り、労働者が生活の豊かさを実感できる経済社会を実現するためには、今後は雇用機会の量的拡大とともに、それぞれの雇用において労働者の意欲と能力を十分に引き出すことが重要となっており、そのために雇用の質を充実することが求められている。
白書は、労働者が産業構造の高度化に向けてより高い付加価値を創造でき、仕事に対してやりがいを持って働くことができているかという観点から「雇用の質」について、職務の内容とそれに伴う労働条件を、人事労務管理面の特徴なども含めて分析し、雇用の質の充実を通じて豊かで実りある職業生活を実現していくための方策を探った。

(分析結果のポイント)
○ 経済社会の変化により、就業構造の第3次産業化、専門的技術的職業、サービス職業の増加、就業形態の多様化が進展。
○ 勤労者生活の変化としては、賃金水準が低下。また、賃金水準の低いパート労働者割合の高まりと一般労働者とパート労働者の賃金格差の拡大を反映し、賃金のばらつきが拡大。労働時間の長い者と短い者の割合が共に高まり、分散化が進展。仕事に対する満足感が長期的に低下傾向。
○ 企業は基本的には長期雇用を維持する中で、年功的要素を縮小し、成果や能力を重視、労働者の主体性を発揮できるよう、雇用管理制度を変更。公平で納得性のある賃金・処遇制度の整備が重要。能力開発、労働者の意欲を高める制度の導入に取り組んでいる企業では、労働者の満足感が高く、意欲も向上。企業業績が向上した 企業では、労働者の意欲が高まっており、労働者の意欲の向上と企業業績はお互いに好影響。
○ 労働者の能力開発に積極的な企業では、積極的でない企業と比べて、売上状況や経常利益が増収である割合が高く、企業からみた競争力も高い。企業業績が向上した企業では裁量制等の柔軟な労働時間制度や職業生活と家庭生活の両立のための制度の導入割合が高い。
○ 労働生産性の伸びが鈍化しており、雇用情勢の厳しい中、生産性上昇率の低いサービス業等で雇用吸収の役割を担っている。また、技術革新等の生産性の上昇率が低下し、持続的な生産性の上昇を目指すには、人員削減によるのではなく、技術革新や労働力の人的能力の向上などに取り組み、産業の高度化を図ることが重要。
○ 若年層では就職状況が厳しく、フリーターが217万人(2003年推計)と増加し、若年無業者も52万人(2003年推計)。
○ 中高年層を中心に職業経験を生かした労働移動が困難な状況。

(今後の取組)
 雇用の質の充実を通じて豊かな生活を実現していくため、労働者が意欲を高め、能力を発揮して働くことができるよう、以下の3つの視点から、企業や労働者、社会全体で取組が強化することが求められている。
@産業構造の高度化・高付加価値化に向けた職業能力の向上
A労働者の意欲の向上に向けた取組
B労働者の意欲の向上と能力発揮に向けた社会的基盤の整備
会場:
(Place)
神戸大学経済経営研究所 調査室 (兼松記念館1階)
Seminar Room at RIEB (Kanematsu Memorial Hall 1st Floor)
対象:
(Intended Audience)
教員、院生および同等をお持ちの方
Faculty, Graduate Students and People with Equivalent Knowledgee
使用言語
(Language)
日本語
Japanese
備考:
(Note)

論文のコピーは研究助成室にご用意しております。
Copies of the paper are available at Research Assistant Room.