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日本は、世界恐慌の最中の1930年1月に金本位制への復帰を行ない、急激なデフレーションに見舞われたが、1931年12月に金本位制から離脱し、いわゆる「高橋財政」のもとで他国に先駆けてデフレーションからの脱却を果たしたとされている。この時期の日本における経済変動と政策対応は、現代にも通じる政策的含意を持った歴史的経験として、経済史研究にとどまらず、マクロ経済学の分野をはじめとする研究者や経済政策関係者の間で広く関心を集めている。デフレーションの深化と収束のメカニズム、ひいては金融政策と物価変動との関係についての最近の研究では、先行きの物価変動に関する民間経済主体の予想形成のあり方が重要な論点とされている。しかしながら、両大戦間期の日本に関する実証研究のなかで、民間経済主体の予想形成に着目したものは極めて少ない。本ワークショップでは、こうした問題意識に立脚し、政策運営の枠組みの変遷や、それに関連して採用された様々な政策が、民間経済主体の予想形成にどのような影響を与えたかについて実証的に検討することとしたい。
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