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江戸期までの日本では、近世以前の世界の他の地域と同様に、「多様な通貨が重層的に流通する」システムが存在していたが、明治にかけて、統一通貨としての円の導入、日本銀行による独占的通貨発行の開始、金本位制への移行といった大きな制度変化が生じた。こうした日本における近代通貨システムへの移行は、江戸期までの通貨システムとどのような関係を持ち、どのような歴史的背景のもとで行なわれたのか。また、それは、世界史の文脈のなかでどのように位置付けられるのか。
こうした問いかけについて、近年における日本経済史、アジア・西洋経済史、地域間関係史の知見を踏まえ、どのようなアプローチが考えられ得るだろうか。その際、共通の視角として、通貨が経済取引の「決済」に用いられてきたという点に着目すると、近代移行期の日本における貨幣の機能に関して、どのような論点が浮かび上がってくるだろうか。
本ワークショップでは、日本の近世史と近代史研究、さらに日本経済史とアジア・西洋経済史研究を架橋する試みとして、日本における近代通貨システムの成立を採り上げ、これを「決済」という視点から再検討し、その世界史的・現代的意義を考えることとしたい。
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