タイトル
第2次大戦前の日本における財政の維持可能性

要旨

近代史上、日本は第2次大戦直後に一度、財政破綻した。本稿では、第2次大戦に至る日本の財政運営がいつから維持可能でなくなったか、その背景にどのような要因が働いていたかを検討する。まず、叙述的資料、データならびに先行研究をもとに、第2次大戦前の日本の公的債務について概観する。次に、公債の中立性命題の検証、経済の動学的効率性の検証、Bohn検定、の3段階からなる財政の維持可能性の数量的分析を行う。さらに、上記の数量的分析の結果の解釈について、経済史、政治史を含む先行研究や最近公開された歴史的資料等をもとに検討する。数量的分析により、高橋財政が開始された1932年前後を契機として、日本の財政が維持可能でなくなったことが示される。資料的分析により、高橋財政開始前後を契機に財政が維持可能でなくなった背景として、軍部が予算決定過程で事実上の拒否権を持つ政府組織のガバナンス上の問題に加え、国際金融面から財政規律を課していた金本位制の崩壊が影響していた可能性があることが示される。


JEL Classification: E62, H63, N15


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