タイトル
「伝説のケインジアン」 ―高橋財政期の低金利政策について―

要旨

1930年代における大恐慌からの脱出に関しては、金本位制からの離脱が、 その必要条件であったとされている (Eichengreen and Sachs[1985])。 それでは、金本位制からの離脱は、自律的な金融政策のための十分条件だったのだろうか? 本稿では、両大戦間期の日本の金融政策について、1930年代初頭におけるマクロ経済政策の革新という観点から分析を試みる。 まず、新たに利用可能となった日本銀行アーカイブ資料を用いて当時の政策当事者の認識を考察する。 次に、ある国債の市場価格から新しい代表的な長期金利の時系列データを導出し、 これを用いて、日本の長期金利と、当時の国際金融市場の中心地であった英米両国の長期金利との連動関係を分析する。 当時の日本の経験からは、日本が金本位制を離脱し、制度的には金本位制の制約が存在しなくなった時期においても、 日本の政策当事者は金本位制の根強い影響を受けていたことが示される。


JEL classification:E42, N15


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