タイトル
耐久消費財支出の金利反応度 −Cross-Euler equationアプローチによる検証−

要旨

  本稿では,耐久および非耐久消費財支出を区別した2財モデルに共和分検定を適用し,各財の異時点間代替弾力性(IES)を推定した.通常,消費の選好パラメータを推定する際に用いられるGMM(Generalized Method of Moments)では,流動性制約など,モデルで考慮されていないようその影響を受けるが,共和分検定によるアプローチは,そのような要素の影響を定常な誤差項として扱うことができる,という利点を持つ.また推定式としては,同時点と異時点間の最適化条件を考慮した,Cross-Euler equation を用いた.さらに,このCross-Euler equationによる推定結果と,先行研究で多く用いられた同時点間最適化条件による推定結果について,Wald検定を行った.Cross-Euler equationによる推定の結果,日本では諸外国と同様に,耐久消費財支出の異時点間代替弾力性は非耐久消費財のそれと比較し,高い傾向にあることが示された.そして,Wald検定の結果,両モデルで推定されたパラメータのうち,特に耐久消費財支出の異時点間代替弾力性は同値でないことが示された.これは,耐久消費財支出の異時点間代替弾力性が有意であることから,耐久消費財支出は期待実質金利の動向に左右され,Cross-Euler equationによって期待実質金利などに関する予測誤差の影響を受けているものと考えられる.よって,予測誤差を含むCross-Euler equationによる推定結果は,特に耐久消費財の支出行動の特徴を反映していることが示唆される.

キーワード:異時点間の代替弾力性,耐久・非耐久消費財支出,Cross-Euler equation


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