タイトル
民主主義・制度・経済成長 研究の現状と課題

要旨

 ガバナンスは開発経済学研究における重要な関心分野であるが、90年代後半よりとくに強調されているのが民主化を通じた制度能力の改善である。その背景にあるのは、民主化の推進による政権交代の可能性の増大やメディアによる監視の強化が、政官による汚職インセンティヴを低下させるというプリンシパルエージェント問題に依拠した認識である。かかるコンテキストにおいて本研究は、4期間(1982-99年)、約100ヵ国により構成されるパネルデータを用いて、民主化の効果を制度、直接投資、経済成長との関連から実証的に検証することを目的とする。議論を通じて導かれる洞察は以下の二点に集約される。(1)民主化は制度能力を改善することで、対内直接投資の増加とそれに伴う高成長率をもたらす。(2)しかしながらそうした好循環は、多くの宗教・言語によって構成される分断国家においては、阻害される傾向にある。


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