タイトル
企業間信頼の構築:トヨタのケース

要旨

 国際競争力があるとされる日本の自動車メーカーの中でも、トヨタ自動車は最も競争力があるといわれている。本稿では、トヨタとその他の日本自動車メーカーを区分し、その取引相手であるサプライヤーに注目して、企業間の信頼と取引関係の構成要素という視点から考察した。検証には、1999年に行った質問票調査により得られたデータを使用した。まず、企業間の信頼では、トヨタを最大の顧客とするサプライヤー(トヨタ・サプライヤー)の方が、トヨタ以外のメーカーを最大顧客とするサプライヤー(トヨタ以外・サプライヤー)よりも、各々の顧客に対して高い期待を抱いていることが明らかになった。次に、取引関係における、組織間学習の成果、相互人員派遣、協力会と自主研・研究会、協調性とパワーの直接行使、信頼担保メカニズム、取引期間と経験について、2つのサプライヤー群に差異があるのかどうか検討した。統計的に差異が認められたのは、アセンブラからの学習、相互人員派遣、自主研年数、取引期間、経験(対応能力)である。しかしながら、平均データの数字上は、上記全てにおいてトヨタ・サプライヤーの方がトヨタ以外・サプライヤーを上回っていた。このように、トヨタは優れた取引システムとともに、サプライヤーとの高い企業間信頼を構築しているという示唆が得られた。


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