タイトル
トップ・マネジメントの戦略的意思決定能力

要旨

 日本企業の企業統治の問題に注目が集まっている。本研究では、その中でもトップマネジメントの戦略的な意思決定能力に焦点をあてた。特に、1)戦略的意思決定能力の業績へもたらす影響の度合いを評価すること、2)戦略的意思決定能力の決定要因を探索すること、および2)近年盛んに実施されているトップマネジメント改革(特に執行役員制度の導入)の有効性を評価すること、を目的とした。実証データは最大手製造業218社から回収された質問票調査によって得た。まず、近年の不確実性が高い市場競争環境の中では、オペレーション能力よりも戦略的意思決定能力が業績の決定要因として重要であることが実証できた、次に、戦略的意思決定能力の決定要因としては、1)取締役会を含むトップの会議体において、参加者が担当部門でなく全社的な視点から自由かつ実質的な議論ができる場の設定、および2)トップの戦略的資質やリーダーシップ能力、が重要であることが明らかになった。執行役員制度は、取締役会の人数削減に代表される構造の改革にとどまり、意思決定の場の質向上や戦略的資質の高いトップの選任などには結びついておらず、結果的に戦略的意思決定能力の向上には貢献していないことが示唆された。


連絡先:〒657−8501
     神戸市灘区六甲台町2−1
     神戸大学経済経営研究所
      延岡 健太郎
  TEL: 078−803−7036
  FAX: 078−803−7059