タイトル
アメリカでの研究開発 ―現地調査レポート―

要旨

 われわれ3人は昨年(1999年)1月下旬から2月上旬にかけて、日本企業のアメリカにおける研究開発をテーマに現地調査を行った。本稿はその現地調査レポートである。
 調査のテーマは、アメリカで研究開発を行う理由、研究開発の活動内容、アメリカでの研究開発が日本親会社の研究開発の全体に占める位置ないしウエイト、研究開発の国際ネットワーク、アメリカでの研究開発のマネジメント、アメリカで研究開発をするうえでの困難などである。
 日本企業がアメリカで研究開発を行う理由としては、アメリカ市場のニーズに対応、アメリカのすぐれた研究開発の資源(研究者・技術者など)と研究開発のインフラストラクチャーを活用、部品・材料の現地調達を推進、などをあげることができる。
 世界的にみてアメリカがいちばんすすんでいる技術の分野が、日本企業がアメリカで研究開発を行ういちばん有力な分野である。松下のアメリカの研究所は、デジタル放送を受信するためのテレビの開発で重要な役割をはたしている。テレビのデジタル放送はアメリカで最初に行われ、また、デジタル技術はアメリカがいちばん進んでいるからである。
 アメリカでいちばん大規模に研究開発をしているのは自動車会社である。とくにトヨタとホンダの開発組織の規模は大きく、数百人から千人の陣容である。しかし、両社がアメリカで開発しているのは、一部の車種のボデーだけである。自動車の研究開発のほとんどは日本国内で行われている。エレクトロニクス企業についても同じことがいえる。
 アメリカでの研究開発は研究開発の国際化のうごきのなかで中心的なものである。しかし、アメリカでの研究開発は、いまのところ、質的にも量的にもそれほど大きいものではない。


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