タイトル
言語コストと言語投資の経営資源モデル

要旨

 日本企業の国際経営における言語を研究するための理論的フレームワークを提示することが、本論の目的である。
この理論的フレームワークは、言語コスト、言語投資、経営資源としての言語能力の3つのキーコンセプトでできている。
 国際ビジネスの世界共通語は英語であるが、英語のできる日本人は多くない。そのために、国際経営で日本語がかなり多く使われる。そのことから、通訳・翻訳の負担、誤解、意思決定のおくれ、情報・決定の過程からの現地人の排除などさまざまなコミュニケーションの問題、すなわち、言語コストが生じている。企業は、これら言語を理由にして生じているコミュニケーションの問題に対処するために、語学研修、留学・海外トレーニー、海外勤務、内なる国際化などの努力、すなわち、言語投資を行っている。われわれはこれらの言語投資のうちで、海外勤務を重視する。言語投資によって、社員の英語力など外国語の能力が向上する。言語能力はひとつの経営資源である。社員の英語力など外国語の能力が向上すると、言語コストが低減し、国際経営の成果の向上を期待することができる。 
 国際経営における言語を研究するときは、日本的経営と日本語の親和性に注意をむける必要がある。また、言語投資およびその成果に影響をおよぼすものとして、組織文化を重視しなければならない。まだ国内重視の組織文化のところが多いが、これを国際志向の組織文化に変えていかなければならない。


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