タイトル
CPI異常値修正指標と金融政策

要旨

 近年、金融政策におけるインフレーション・ターゲティングの考え方が、注目を集めている。
 ここではインフレーションターゲティングを、Bernanke and Mishkin(1997)のように長期的な目標としてのインフレーションレートの重要性と短期的な裁量の余地がある政策スキーム(constrained discretion)として捉え、日本のCPIの異常値修正指標について白塚(1997)が試算したデータを、物価の将来予想を反映する基調データとして用い、次のような検証を行った。第1に、日本の金融政策は、CPI異常値修正指標が示すような物価基調を長期的的視野に入れながら金融調節を行ってきたのかという点である。第2に、CPI異常値修正指標で控除された異常値部分は、長期的な金融政策判断に影響を与えるものだったのかという点である。構造変化を許容する形の単位根、共和分検定を行い、より弱い仮定でインフレーションターゲティングの検定を行った点に特徴がある。もし、異常値修正指標が金融政策運営に長期的に安定的な関係を保ち、また、元の指標との乖離部分には、長期的に反応しているのでなければ、実際に行われた金融政策は、異常値修正指標のような基調を判断する操作を例えば総合判断という形で行っていたことの傍証になる。実証の結果では、必ずしも断定的なものではないが、日本の金融政策運営はインフレーションを長期的視野にいれて運営されてきたこと、および、CPI異常値修正指標が控除した異常値データに金融政策が長期的に反応してはこなかったこと、を否定するような証左は得られなかった。

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