タイトル
韓国における受託加工の分析−事業所データを利用した実証分析−



要旨

韓国では近年、アウトソーシングの重要性が高まってきているが、アウトソーシングの担い手のひとつである受託加工(受託製造・賃加工)企業についての研究はこれまで十分になされてこなかった。しかし、受託加工に携わる中小企業は多く、また、受託加工は地域とも関連の深い分野であるため、こうした分野の実態を解明することは、今後、中小企業政策や地域政策を進めていく上での共通の知的基盤を提供するという意味からも重要となる。本研究は、このような受託加工の実態を韓国のマイクロデータによって検証しようというものである。 本稿では、まず、先行研究から下請けや受託加工の位置づけを行い、次に受託加工と企業規模、企業年齢、産業、地域との関係をデータによって概観した。その上で、受託加工に関する仮説を設定し、韓国統計庁「鉱工業統計調査」のマイクロデータをベースに実証分析を行った。  分析の結果、@資本のような経営資源や業歴が不足するほど受託加工の重要性が高まり、A女性労働力の割合が高く、生産労働力が中心で、労働力を多く動員できるほど受託加工をする傾向があること、B産業団地の中でも、国家産業団地の役割が大きいが、地方産業団地や農工団地の受託加工への影響も高まってきていること、C産業団地クラスター事業推進地域は、もともと重化学工業化推進地域となった地域が受託加工にも良い環境となっているが、クラスター事業推進地域に近年の共通性はあまり見られないこと、D製造業企業の集積は受託加工の重要性を低下させる方向に、産業集積は受託加工の重要性を高める方向に作用すること、E周辺地域が受託加工向きの環境にあるとはいえないこと等が明らかになった。





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