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基調報告 |
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配付資料(PDFファイル) |
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森田弘一 (神戸大学経済経営研究所政策研究リエゾンセンター助教授) |
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本ワークショップの問題意識として、大学における活動が「経済的価値」として実現することの重要性についての意見陳述と、その実例として産学連携による「実用化研究開発」が実態としてどのように行われているかについて、最近の調査結果に基づいた報告が行われた。 |
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「実用化研究」に関する意識は大学研究者と企業との間で隔たりがあるものの、大学研究者側に研究成果の実用化に対する積極性が見られること、また、研究者の特許取得意欲は、企業との連携のあり方にも影響を及ぼしている。 |
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産学連携型研究開発の現実のパターンとして、大学研究者と企業研究者との個人的つながりを契機とするものと、従来の個人的つながりに関係なく、大学と企業が組織対組織で戦略的に連携を模索するものに区分して考えてみることの論点について整理が行われた。 |
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行政からの報告 |
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配付資料(PDFファイル) |
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橋本正洋 (経済産業省産業技術環境局大学連携推進課長) |
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現在の産学連携は、90年代の日本の厳しい経済状況を契機とした21世紀型の新しい制度設計に基づくものであることについて報告が行われた。 |
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基本的な柱として一番大事なのが「大学改革」であり、その他に(TLOの設置等による)「技術移転と大学発ベンチャー」と(MOT等の)「人材育成」が挙げられる。 |
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21世紀型の産学連携は、制度的にはいろいろな仕組みができており、(産業界からも)大学は「最後の残された資源」としての大きな期待が寄せられている。あとは先生方のやる気と大学(学長等)のリーダーシップであるとの提言があった。 |
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企業からの報告 1 |
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配付資料(PDFファイル) |
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木下憲明 (株式会社免疫生物研究所取締役開発・企画部部長) |
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バイオ分野の研究開発型企業(中小企業)としての立場から、産学連携活動の現状と期待についての報告が行われた。 |
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連携がうまくいくには両者の目的意識の「ベクトル」が同じであること、インターネット等の発達によって最近では地理や地域性はあまり気にならないが(連携活動の)「連続性」が重要であること、結局は人と人とのつながりであり、成果を社会還元できるかどうかの意識が必要である。 |
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医学・薬学関係では大学が保有する基礎研究基盤(人的ネットワークを含む)が重要であり、臨床応用との関係でも大学の役割は大きい。このような大学の機能を活用することで、(ベンチャー的な)中小企業でも自らの強みを生かした企業活動が可能となっている。 |
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法人化による今後の大学運営の変化には注目しているが、産学連携は道徳的原理が重要であり、「成功本位」ではなく「誠実本位」であるべきとの提言があった。 |
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大学からの報告 |
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配付資料(PDFファイル) |
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渡辺康正 (神戸大学イノベーション支援本部・連携創造センター助教授) |
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神戸大学における「産学連携活動」のこれまでの経過と現状を踏まえた報告が行われた。 |
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ハコモノとしての「共同研究開発センター」の発足は古いが、現在の問題意識にあるような「産学連携活動」については、まだ取り組み途上にある。 |
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産学連携活動では「奨学寄付金」の占める割合が高く、民間を相手とする「共同研究」では100万円単位のものが多い。また、「受託研究」も6割以上が国や公的機関からの研究費という現状。TLOの活動も頑張ってはいるが、ライセンスによる収入はまだ数十万のレベルであることから、(個人的意見ではあるが)「産学連携」を法人化に向けての外部資金による資金源としようという考え方にはやや疑問がある。 |
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大学としての産学連携体制を(人的・事務的な面も含めて)鋭意整備しているが、個々の教官の意識も含めてまだこれからであり、研究ポテンシャルについては、今後、21世紀COE等によって大学としての特色がある程度出てくるのではないかとの現状認識が示された。 |
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企業からの報告 2 |
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配付資料(PDFファイル) |
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名山理介 (三菱重工業株式会社技術本部高砂研究所次長) |
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技術分野・製品分野が広いものづくり企業としての立場から、産学連携活動の現状と期待についての報告が行われた。 |
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(三菱重工業の事業ドメインにおいては)良い技術があるというだけではだめであり、社会的ニーズに合致していることが必要。従って、技術の幅が広がり、かつ、技術だけでは対応できない部分において(社会科学的な分析も行うといった側面も含めて)産学連携に対するニーズがある。 |
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「包括的連携スキーム」についてはその定義が何であるかについては議論の余地はあるが、(企業)組織と(大学)組織の対応において、何を行うかについて組織的に合意してから連携活動を行うものであると考えている。その場合、社会的分析も重要な要素である。 |
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産学連携においては、ロードマップを産学官で共有するということが重要。そのようなロードマップにおいて、(市場に)近いところは企業、大学はロードマップに沿ってシーズを提供するということが考えられる。リスクのある研究については、産も学もともに複数で対応するということもあるのではないか。また、産業界は大学にシーズのみを期待するのではなく、一緒になって問題解決を図ることも期待している。新しいことばかりでなく、従来型の基盤技術も継続して欲しい。 |
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日本の大学は、学術的ポテンシャルは高いが成果の約束(契約の概念)が弱いことは事実。企業が外国の大学に研究資金を提供するにはそれなりの理由があり、そういった観点から外国大学とのベンチマーク比較をしてみてはどうかとの提言があった。 |
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総括的報告 |
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配付資料(PDFファイル) |
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原山優子 (経済産業研究所ファカルティーフェロー・東北大学教授) |
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産学連携活動の現状について、「古くて新しい産学連携」について総括的な整理を行うという立場から報告が行われた。 |
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「古い」産学連携は、透明性に欠け「やってはいけない」といったネガティブなイメージであったが、「新しい」産学連携は推進のための制度整備も進み、ポジティブなあるいは「やらなければいけない」といったイメージに変化している。大学の法人化を契機として産学連携の環境を一気に改革できるかどうかがポイントではあるが、日本の環境ではインクリメンタル(漸次的)な改革になるだろう。産学連携をどのようなミッションとして位置づけていくか等、大学としての戦略作りが大きな課題であるが、今の大学にそのような機能があるかどうかには疑問がある。 |
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産学連携を「狭義」なものから「広義」なものへと視点を広げ、「ナショナルイノベーションシステム」としてだけでなく「地域のイノベーションシステム」として考えることも重要であるとの提言があった。 |
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自由討議 |
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延岡健太郎 (神戸大学経済経営研究所教授) |
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各報告を受けて、『社会システムは意図せざるものであり、制度や計画も大事だがそれだけではうまくいかない。逆説的だが、産学連携のしくみなどなくても勝手に産学連携が進んでいくように、大学は本当に先端的な志の高いイノベーションを目指し、企業は世界中のリソースを最適に使うという方法が必要なのではないか。それは「中途半端」ではなく、それぞれが極端をめざすということが本当に強い産学連携を生むのではないか』との議論喚起が行われた。(以下、自由討議) |
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現場の研究者の先生が雑事にとらわれるのは良くない。研究者は研究に本腰を入れ、TLO等が先生をサポートすることが必要。 |
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大学としての戦略を考える組織ができていない。また、個人的なキャリアパスも多様化し、一定期間は教育を免除して研究に専念できるような制度も必要。 |
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産学連携についてはいろいろな施策が行われているが、量と質を分けて考える必要があるのではないか。今の(産学連携を巡る)コミュニティはオーバーオーガニゼーションではないか。 |
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トップダウンで産学連携の制度を与えるのではなく、ボトムアップ(大学の発想)の中で何が必要であるかどうかという問題意識が生まれ、そのために政策が講じられるということが重要ではないか。 |
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個人レベルで見た場合、日本の研究者は十分世界レベルにある人が多数いる。それをうまくマネジできていないことが問題。 |
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これらの自由討議をふまえ、最後に『今の制度、枠組みの中で(産学連携を)進めていくことも大事だが、膨大なサポートでペイしないこともあることにも留意するべき、もっと大きな問題として産学連携についてどう考えていくか、今の取り組みを否定するのではなく、並行して進めていくことが重要ではないか』との総括が行われた。
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本ワークショップにおける各発表者の発言は、それぞれが所属する組織としての見解ではなく、ワークショップの問題意識に即して個人的な知見・見解を述べられたものです。
また、本報告の内容を当センター及び各発言者個人の了解を得ることなく、無断で引用等されることは厳にお断りいたします。
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