タイトル
両大戦間期日本の長期金利指標−東京株式取引所における上場国債の価格データを用いた推計−

要旨

本稿では、両大戦間期日本の金融実態を把握するためのデータの利用可能性を拡張する ことを目指し、上場国債の流通価格を用いた新たな金利の時系列データを作成する。具体 的には、東京株式取引所に上場されていた国債の取引価格をもとに、1919 年1 月から1938 年12 月の時期について、超長期債の価格を用いて長期金利を推計するとともに、1928 年 1 月から1936 年4 月までの時期について、クーポン・レートが同一で満期の異なる複数 の国債の金利を用いて、1 年半物〜10 年物までの期間別金利を推計する。さらに、この期 間別金利を使って主成分分析を行ない、イールド・カーブの形状に関する解釈を試みる。 その結果、日本の金本位制からの離脱が現実味を帯びてきた1931 年秋から年末にかけて、 長期的なデフレからインフレへと市場参加者の予想の変化が生じていた一方、日本が実際 に金本位制から離脱し、高橋財政下での経済政策が具体化した1932 年においては、市場 参加者のインフレ予想はむしろ弱まっていたことが示唆される。


キーワード:両大戦間期の日本経済、長期金利、国債流通市場、イールド・カーブ、主成 分分析


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