タイトル
メルコスルにおける自動車産業の分業構造

要旨

  メルコスルの自動車産業は、地域全体を一体的な市場としてすべく、変化する経済環境に適応させながら、分業体制を維持してきた。当初は車種別分業で完成車の交換を行っていたのが、コスト競争力のあるブラジルへの部品生産の集約へと移り、近年はアルゼンチンでの最終組み立ては大幅に縮小されるか一部の輸出向け車種に集中し、フルラインを取り揃えたブラジルから完成車が供給される傾向にある。  空間経済学の理論によれば、規模の経済と輸送費用の相互作用が働くときに、十分に輸送費用が引き下げられれば、産業集積が起こり、空間経済構造の不均一性が強まると考えられる。この議論は国際的地域経済統合にもあてはまるものであるが、国際間では不均衡問題が政治的紛争に発展しやすく、地域経済統合そのものを頓挫させるリスクを含んでいる。この問題を回避するために、セカンド・ベストではあっても、適切に分業体制をとることによって政治的にも実現可能な地域統合のメリットを享受することが可能になる。本研究を通じて、メルコスルの自動車産業においては、マクロ経済状況の変化に柔軟に対応し、不均衡が政治的対立を生むような事態を回避する対応が進んでいる実態が確認された。


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     浜口 伸明
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