タイトル
情報技術革命と日本的経営の緊張関係 ―ERPを中心にして―

要旨

 ERP(統合業務パッケージ)が日本企業の経営にいかなる意味をもつかを明らかにすることが、われわれの研究の課題である。日本企業の経営の特徴や基本的な考え方(日本的経営)とERPの特徴や基本的な考え方は、基本的に相違している。しかし、日本企業は自社開発システムの限界やネットワーク外部性などを理由にERPの導入を進めなければならない。この「日本的経営とERPの緊張関係」が、われわれの研究の概念的枠組みである。本格的な研究に先立って行なう準備的研究に位置づけられる本研究は、インタビューを中心的な方法として行なう。日本企業のERP導入には、ERPを会計など特定の業務だけに導入することが多い、業務に合わせるためのERPの変更・追加が多い、ERPの導入成果は高くない、などの特徴がある。われわれは、また、日本企業が導入しやすいERPの特徴として、業務に柔軟に適応できること、モジュール型、日本企業の業務をモデルに開発されたもの、を指摘している。現行の欧米生まれのERPは、これらの特徴を備えていないものが多く、日本企業の要望に応えることがむずかしい。他方で、ソフト開発で不利な日本企業のことを考えるとき、日本生まれのERPを期待しにくい状況にある


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