タイトル
中国企業の市場主義管理 ―ハイアールの人事部―

要旨

 本稿は、中国を代表する企業のひとつである総合家電企業、海爾集団(ハイアールグループ)の人的センター(人事部)の目標請負システムのケーススタディである。製品事業部(製造部門)、販売部門、財務部門、物流部門などは自分の人事部門をもたない。人事の業務はすべて人的センターが行なう。製品事業部など(人的センターをふくめて)はすべて、独立採算のプロヒットセンターであり、さらに独立の法人格をもつ会社である。製品事業部などと人的センターの関係は、市場における企業と企業の取引関係に似ている。人的センターは、人事の業務を製品事業部などから請け負う。人的センターは、人事管理システム、モチベーションの方法、人材育成の方法などの革新によって、請け負った目標を達成しょうとする。そして、人的センターは、請け負った人事業務の目標の達成度に応じて報酬をえる。人的センターの目標請負システムには、(1)個人評価、(2)目標を数量的に設定、(3)評価基準は数量的、(4)目標の達成度(結果)を評価、(5)短期的評価(毎日評価)、(6)評価のルール・プロセス・結果を公開、(7)金銭的報酬、(8)競争的(社内公募)のような特徴がある。日本企業における人事管理とは、正反対といってよいほど相違している。海爾の人的センターの目標請負システムは、スタッフ業務である人事の業務に市場原理ないし市場メカニズムを適用したものとみることができる。よって、同社の人的センターの目標請負システムは、市場主義管理としてとらえることができる。


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