タイトル
組織間学習システムとネットワーク信頼

要旨

 本稿では、トヨタによるサプライヤーの組織間学習の仕組みを取り上げ、ネットワークにおける信頼(「ネットワーク信頼」)を構築するプロセスを考察した。検討した組織間学習システムは、(1)協豊会、(2)生産調査部、(3)自主研、(4)従業員の移動(出向と派遣)であり、基本的にその多くを聴き取り調査に基づき記述した。ネットワーク信頼を向上させるためには、ネットワークのメンバーによるアイデンティティの確立が重要なポイントとなる。「トヨタのネットワーク」へのアイデンティティの確立において、ネットワーク・レベルでの共通体験や組織間学習による知識の共有、理念や価値観の共有が必要なのである。そのため、トヨタの設計する組織間学習システムは「ネットワークとダイアド」・「暗黙知と形式知」という全ての組み合わせを体系的にアプローチする仕組みになっていることを指摘した。トヨタに部品を供給するサプライヤーは、組織間学習を通じて能力を高めるとともに、ネットワーク信頼を構築しているのである。したがって、模倣の困難な組織間学習システムと高い水準のネットワーク信頼が、トヨタを中心とする部品取引ネットワークの持続的競争力の源泉であるという示唆も得られた。


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