タイトル
ユーロ圏における貨幣需要関数に関する実証分析

要旨

 本稿の目的は、ユーロ圏における貨幣需要関数の安定性を実証的に検討することである。Coenen and Vega(1999) 等1980年からのデータを用いた先行研究があるが、われわれはECB公表のデータを用いて1994年1月から2001年6月までの期間で推定を行った。単位根検定の結果、貨幣需要関数として取り上げられる変数は、すべてI(1)であることが判明した。そこでヨハンセンの方法を用いて、共和分検定を行った。その結果、共和分ベクトルの存在を確認することができたが、その符号が経済モデルの想定するそれとは異なるため、ダイナミックOLSを行った。しかし、回帰係数の符号条件や大きさが合致する共和分ベクトルを得られないため、一階の階差をとった貨幣需要関数とその部分調整モデルを通常のOLSを用いて推定した。その結果、符号条件は満たすものの有意な回帰係数を確認できなかった。これにより安定的な貨幣需要関数が存在しないため、欧州中央銀行はマネーサプライ・ターゲットを採用すべきではないという政策的インプリケーションを得た。


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