タイトル
遺伝子診断の規制と生命保険市場における均衡の非存在性

要旨

 将来、がんに限らず遺伝子診断によって病気にかかりやすい体質かどうかわかる状況が実現されたとき、保険の審査目的での遺伝子診断の利用が禁止されたとする。この状況について、経済学的観点からどのような言及ができるだろうか。ヒト・ゲノム解析計画(Human Genome Project)によるDNA塩基配列の解読は、生物学、医療のみならず我々の社会にも大きな影響を及ぼすと考えられている。この論文では、保険加入者への審査目的での遺伝子診断に、規制が課せられた状況における生命保険市場の均衡を分析する。その結果、この市場にはもはや均衡は存在しない可能性を示し、均衡の(非)存在性は我々の直観とは異なる結論を導くことを示す。そして、生命保険における遺伝子診断の利用は、経済学的には保険加入者にとって望ましい状況をもたらすことを示す。


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